小丘のマンション

丘の上に立つ秋雨のマンションに来た。
部屋に入ると、窓から町を見ることが出来る。
相変わらずすごいな、小さく漏らすと、秋雨が後ろから肩を抱いてきた。


「学校も一応近いからな」

「うん。階段きつそうだけど」

「はは、きついさ。まあ、その他はいいところだから」

「ん」

空き部屋に荷物を運びこみ、軽く掃除をする。
掃除が終われば、夕食時で秋雨が作った夕飯を囲んだ。


「明日、学校まで送るから」

「うん。ありがと」

「帰りも迎えに行く。終わったら電話しろよ」

「わかった。…あの、さ…、具合、悪くなったら呼んでもいい?」

「ああ。明日講義ないから」

こくりと頷いてからごちそうさま、と伝え食器を運んだ。


食器を洗い終え、リビングのソファーに腰を下ろす。
どこか気を張っていたようで、ため息をついた。
明日、学校に行くのが怖い。
秋雨もどこかそれを感づいていたのか、隣に座って顔を覗き込んできた。


「はな、…明日、休むか?」

「…、ううん」

「そうか。…あまり、無理するなよ」

「うん、…だから、具合悪かったら、呼ぶよ」

「ああ」

優しい大きな手のひらが頭を撫でてくれる。
姉とは違うその手のひらが、とても心地よかった。



「英、大丈夫か」

「うん、大丈夫…。さぁ、」

「ん?」

「ううん、なんでもない。行ってきます」

秋雨の車から降りて手を振る。
ひらひらと振り返してくれた手に小さく笑うと、秋雨も笑ってくれた。
マンションに向かう車を眺めながらゆっくりと校門をくぐる。

教室に入ると、和穂が手を振ってくれた。
和穂の元へ行き、腰を下ろすとこそこそと自分のことを話す声が聞こえてくる。


「おはよ。…大丈夫か」

「…ごめん、和穂。保健室に行く」

「ああ。ノート取っておくよ」

「ありがとう」

自分のことを話されることに気分が悪くなり、教室を出た。
保健室に入ると、優しい顔をした中年の女性がベッドを貸してくれる。
午後まで、と告げると無理しないでね、と微笑んでくれた。

午後から授業を出て、終えたところで携帯を開いた。
秋雨の電話を掛けるとすぐに応答してくれる。


「もしもし」

「ああ、終わったか」

「うん。…校門で待ってる」

「了解」

電話を切り、校門で待つ。
日差しが強く、目を細めた。

秋雨の車が少し経ってから来る。
すぐに乗り込むと、秋雨が水をくれた。


「どっか行きたいところとかあるか」

「どこでもいい」

「かわいくないな…。夕飯の買い物でも行くか」

車が出ると、英は窓の外を見ながら秋雨の鼻歌を聞いた。
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