見たくない

ホテルについて、熱いシャワーを浴びる。
身体が汚れてしまったように思えて、何度も洗った。
身体から流れていく泡がまるで、汚いもののように見た。


ノックの音が聞こえ、結華は扉を開けた。
部屋の中に導いた結華はソファーに腰を下ろす。
その暗い表情に、秋雨も隣に腰を下ろした。


「私の所為だわ。…もう少し、考えていれば…」

「いや、俺もあの時…」

秋雨の言葉を聞いてないのか、結華は顔を覆って悔しそうに涙を耐える。
そっとそんな結華の肩を抱いて、頭を撫でた。


シャワー室から出て、服を身にまとった。
少し濡れた髪からしずくが垂れる。
部屋の少しあいた扉から中が見えて、秋雨が姉の肩を抱いているのが見えた。
急にこみあげてきた吐き気に、もう一度シャワー室に戻る。
ガタンと大きな物音をたてながら、座りこみ嘔吐してしまう。
苦しさから涙が出てきた。


「英っ」

かけてきた秋雨が、背中を撫でてくれた。
大きな手のひらがゆっくり上下する。
シャワーを流して、ずぶ濡れに濡れた。


「英、」

シャワーが止められて、濡れた服が脱がされる。
すぐにタオルで包まれ、そのまま抱きしめられた。
ぽんぽんと撫でてくる手に目をつむる。
傍にあったバスローブを適当にとり、英を包む。
部屋に戻り、ベッドに座らせた。
結華が持ってきたタオルで英の髪を拭く。


「ごめん…、もう休みたい」

そう呟いて、ベッドに横になる。
布団にくるまり、目を瞑ると疲れが溜まっていたのか意識が遠のいていった。
英がすぐに眠りについたのを見て、ふたりはソファーに戻った。


「秋雨、お願い。あの子を、預かって…。家にも連れて帰れないわ」

「ああ、構わない。…英さえ、良ければ」

「英にはあなたから話して…。ごめんなさい、全部任せて」

「いや、別にいいって。俺の弟と同じようなものだから」

結華の頭を撫でて笑う。
英とは違った髪触り。
微笑んだ結華に、微笑み返した。


「ありがとう。あなたが、私たちの幼馴染でよかったわ」

「はは、ありがとう。…、まだやらなければいけないことがあるから、今日は帰る。荷物は時雨と俺で運ぶから」

「ええ。じゃあ、また」

秋雨が部屋を出ていき、結華はシャワー室へ向かった。
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