体育座り

秋雨が泊まりに来る日。
英は窓を開けて待っていた。
木を登ってきたのか、秋雨が靴を放り投げてから入ってくる。
すると、部屋の戸をノックする音が聞こえ、カギを開けた。


ベッドに背中を預けて座っていると、秋雨はその隣に腰を下ろしてくる。
時雨は、英を挟んで隣に腰を下ろして、秋雨が持ってきた酒の入った袋を見始める。
テレビをつけると、時雨がプルタブを倒す音が聞こえた。


「英はこれな」

そう言って渡されたのは、かわいらしい模様の物。
前に好きだといったものだ。
甘い味がとてもおいしい。
プルタブを倒して、英もちょびちょびと飲み始めた。


「これうまいな」

「ああ、これ輸入品取り扱ってる店で買ってきた。時雨、甘いの好きだよな」

「ああ。ロイ、食べてみたら?」

「うん」

時雨に勧められ、皿に乗っていたナッツを食べる。
少し塩味のきいた甘さに頬を緩める。


「ほんとだ、おいしい」

「添加物多そうだけどな」

時雨が苦笑交じりにそう言い、英も軽く笑う。
程よく酔いが回ってきて、缶をテーブルに置いた。


「…この女優、最近見るよなー」

「この間、うちに来てた」

「うっわ、さすが、一財閥」

時雨と秋雨が話すのを聞きながら、膝を立てる。
体育座りをするように座って、膝がしらに額を乗せた。


「英?」

「この格好、落ち着く」

「…そうか」

小さく丸まった英に、秋雨は笑う。
肩に腕を回し、ポンポンと撫でた。


「そろそろ点呼の時間だ。帰るわ」

「あ…」

立ち上がろうとした英を静止して、秋雨は時雨を見送りに行く。
ロイ、ゆっくり休めよ、時雨の言葉に返事をした。
鍵を閉める音が聞こえて、そのあとに戻ってくる足音が聞こえる。


「さぁ、隠れなきゃ…」

「あぁ。酒片づけてからな。ベッドに座ってろ」

「うん…」

ベッドに腰を下ろして、秋雨の動きを見る。
秋雨は窓を開けてから、空き缶を袋に入れた。
それからベッドの下に押し込めて、つまみも片づける。


「シャワー室にいる。点呼終わったら呼べよ」

「うん」

シャワー室に入った秋雨を確認して、時計を見る。
点呼の時間だ。風紀委員長がやってくる。
ノックの音が聞こえ、英は玄関へ向かった。


「ロイ、慣れてきたか?」

「はい、だいぶ慣れました。井上先輩」

「よかった。…空き缶、ちゃんと捨てておけよ」

「はい」

扉を閉めて鍵を閉める。
それから、井上の言葉に首を傾げた。
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