春ですねぇ

春のリクエスト祭り
時雨×椿
あおい様


「春だねぇ、椿」

「うん…! 春!」

「デートしよっか」

「デートっ」

時雨からのデートのお誘いに椿は白い頬を赤く染めて、目を細めた。
愛らしい笑みに時雨も、笑みをこぼす。
今年の春は去年より早かったなぁ、と思いながら、支度を整えていると、椿はもうすでに終わったのか後ろからぎゅっと抱き付いてきた。


「椿、早いね」

「うん。時雨さんはまだ?」

「ああ、もう少し待って。椿、これはめてくれる?」

「うん」

椿の手のひらに、指輪を乗せる。
昔、椿の花が咲き誇るガーデンで買ったもので、時雨は椿にそれをはめてもらった。
灰色の艶やかな髪を梳いて、額に口付け礼を伝える。


「時雨さん、」

「うん、貸してごらん」

椿も同じデザインのネックレスを時雨に手渡し、首元をさらす。
白い肌に銀色の鎖を通し、抱きしめるようにしながら鎖を止めた。
鎖骨の中心の窪みに薄紅のガラスであしらわれた椿が、飾られる。


「じゃあ行こうか。行ってきますのチューは?」

「んー、時雨さん、しゃがんで…」

「はは、ごめんね。はい」

「んっ」

目を瞑った時雨の唇にキスをして、椿も時雨からキスを貰う。
手をつないで一緒に家を出て、時雨がカギを閉めるの眺めた。


「時雨さん、どこ行くの」

「どこ行こうか」

「うみ、行きたいな」

「うみ?」

「うん。あのね、たぁ君、昨日うみ行ったんだって」

「そっか。じゃあ海行こうか」

こくこくと嬉しそうに頷く椿に時雨は小さく笑う。
それからふたりは手をつないだまま、エレベーターに乗り込んだ。

一番奥の駐車場に停められた時雨の愛車に乗り込む。
サングラスをかけてから、エンジンをかけた。
駐車場の外に出ると、思っていた通りまぶしくて椿が目を細める。
もうひとつあるサングラスを手に取り、椿に渡した。


「椿、似合うね」

椿のサングラス姿は時雨のお気に入りで、時雨は椿をちらりと盗み見る。
嬉しそうにしている姿も愛らしかった。


「お出かけ、久しぶり…」

「そうだね。うれしい?」

「うん、うれしい…。時雨さんと一緒」

「ふふ、俺もうれしいよ。椿と一緒なの」

久々のデートに心が弾んでいるのが見てわかる。
時雨はもっと外に連れ出したいのだけれど、と心の中で思いながら車を走らせた。

山道に入る手前、コンビニにより飲み物やお菓子を買う。
準備が整ってから、再度車を走らせた。
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