日差しを浴びて

時雨×椿
旧サイトhit記念小説


昼下がり、時雨と椿は家の掃除をしていた。
窓から射してくる日差しが心地よくて、椿は体を伸ばす。
窓を拭いている最中で、心地よい日差しに欠伸も漏らした。
時雨はソファーを動かしたりして掃除機をかけている。


「窓、綺麗になった?」

時雨が掃除機を止めて、尋ねてきて椿はもう少し、と答えた。
その答えを聞きながら、時雨はソファーを元の位置に戻す。
もう一方のソファーも同じように動かした。


「もう少ししたら、休憩にしよっか」

「うん、昨日作ったお菓子、残ってるよ」

「じゃあ、それを食べながら、だね」

「うん、楽しみ」

「そうだね」

そう会話して、掃除を続ける。
ようやく終わり、綺麗になった窓を見た。
時雨も、ソファーを戻す作業にはいっている。
椿も道具を片づけて、ソファーを元の位置に戻すのを手伝った。


「そう、そこをここに持ってきて」

「ん、」

「重い?」

「平気…」

ころんッ、かん、かん…

がっと元の位置に戻った時、何かが落ちる音がした。
椿はそれを拾い上げ、首をかしげる。
綺麗なまん丸。


「これ、何? 綺麗」

「あ、それ…そこにあったんだね」

薄い青色がきれいに混ざっていて、椿はそれを時雨に渡した。
時雨は椿に窓際によってごらん、と伝える。


「こうして、光にあてると…」

そう言いながら、それを光にあてた。


「中、見てごらん」

「あ…わ、綺麗…」

「ビー玉っていうんだよ」

「ビー玉?」

「そうだよ。綺麗でしょ」

「うん」

「それ、俺が小さな時に買ってもらったやつなんだよ。ここにあったんだね」

懐かしそうに話す時雨を見て、椿はなんだか心が温かくなった。
掃除機を置きにいった時雨の背中を見て、もう一度ビー玉を日に透かす。


「ビー玉、気に入った?」

「うん」

「じゃあ、それは椿にあげようかな」

「いいの?」

「いいよ。俺はもうそんな年じゃないしね。それに、椿なら大事にしてくれるでしょ?」

「うん」

椿の輝いた瞳を見て、時雨は笑った。
それから、そっと頭を撫でて、ビー玉を握る手と、逆の手を握る。


「日を浴びると、綺麗に輝くね」

「うん、すごい。初めて見た」

椿が何度もビー玉を日に透かす様子を眺める。
日を浴びたビー玉も綺麗だったが、それを眺めている椿もとても綺麗だった。

日を浴びて、どちらも綺麗に輝く。


end
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