春野家の1日-6-
「たろ…」
風太のかすれた声を聞いた直後、奥のほうで熱いものがはじけたのを感じる。
それを感じたとき、汰絽も同じように目の前が真っ白になりそうなほどの快感に目をつむった。
思わず悲鳴のような息を漏らし、風太にしがみ付く。
そんな汰絽を抱きしめて、風太は軽く腰をゆすった。
「は、ぁ、あぁっ、…ん、ん、」
途切れ途切れに汰絽の声が漏れて、風太はそっと自身を抜き取った。
それから、汰絽の額や頬に口付ける。
「たろ」
「ん、…風太さん」
うっとりとした声に、風太は体が熱くなるのを感じたが、汰絽を抱き上げた。
「風呂…入る?」
「はいりたい」
「じゃあ、このまま行くぞ」
「うん」
こうした2人っきりの時にでる、甘えた感じの汰絽に気を良くして、風太は風呂場へ向かった。
それから風呂場に汰絽をおろして自分も入る。
汰絽の白い背中へ噛みつきながら、シャワーを出した。
「いたい」
「そうか」
「いたいのいやです」
「知ってる」
噛み痕を舐めてから汰絽の体を洗い、後始末をした。
その間も甘く喘ぐ汰絽に風太は息を吐き出してから、口付ける。
体を洗って、一通り綺麗にしてから、風呂場を出た。
ぐちゃぐちゃになったシーツも洗濯機に入れて、風太の部屋に向かう。
「そろそろ行かなきゃ間に合わねえな」
「腰痛いです」
「撫でようか?」
「ん」
小さな返事に答えて撫でてやり、汰絽のお気に入りのVネックのセーターを着せた。
それからジーンズを履き、風太も着替える。
着替えてから、ごろん、と寝転がっている汰絽の頬を撫でて起きるように促した。
素直に起きあがった汰絽は風太にすり寄ってくる。
そんな汰絽の頭を撫でてから、部屋を出た。
「歩きで大丈夫か?」
「平気です」
「ならいいけど。無理そうならおんぶだぞ」
「おんぶー」
と、手を広げた汰絽に苦笑しながら、風太は汰絽をおぶった。
マンションを後にして、朝も通った通学路を通る。
汰絽が小さくむくの好きな朝やっているアニメの歌を歌ってるのが聞こえた。
それが、なんだか嬉しそうで、なんだか穏やかに感じる。
「たろ、むくの卒園式、2人ででような」
「はい、2人で…」
「その前に俺か」
「あ、そうですね」
「まあ、まだ先だけど」
風太が笑って見せると、汰絽も小さく笑った。
そのあとも他愛ない会話をつづけてたら、幼稚園についた。
汰絽をそっとおろせば、2人は園内に入っていく。
「あ、むくちゃーん、お迎えですよー」
先生が汰絽の姿を確認してむくを呼ぶ。
むくが走ってくるのを見て、汰絽が笑顔をこぼした。
「たぁちゃん! ふうた!」
むくの嬉しそうな声に汰絽がしゃがんで抱きしめる。
風太はむくの頭を撫でて、汰絽の肩に手を置いた。
「楽しかった?」
「うんっ。今日はね、せんせいと一緒に、カレー作ったの」
「カレー? 上手にできた?」
「うんっ。でも、たぁちゃんの作るカレーが一番だよ」
「そう? 嬉しいなぁ」
「ふうたも、たぁちゃんのカレー好きだよね?」
「おう。好きだぞ」
「でしょー?」
汰絽が立ちあがって、むくと手をつないだ。
むくのもう片方の空いた手を風太がつなぐ。
前後に揺れる手にむくが嬉しそうに鼻歌を歌った。
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