新緑の中で-2-
「ん…。おいしい!」
「ああ、うまいな」
「んーっ」
良かったな、と笑う風太に、汰絽も笑う。
三角の形のこんにゃくを食べながら歩いていると、公園についた。
穏やかな日差しの中、こどもたちが遊んでいる。
「ここ、桜咲いていたら綺麗だったろうな」
「そうですね」
風太と汰絽がそんな風に話していると、むくと壱琉も後ろからやってきた。
ふたりは自販機で買えるアイスを食べながら歩いている。
むくはクリームソーダ味、壱琉はレモン味のものを食べていて、傾けてはお互いのものを食べていた。
食べ終わった串をごみ箱に捨てて、汰絽と風太はベンチに腰を掛ける。
「壱琉、レモン、もっとほしいな」
「はいはい。お前そうやっていっつも俺が食べてるの取ってくよな」
「だって、壱琉が食べてるのの方がおいしそうなんだもん」
「そうかい。腹壊してもしらねーぞ」
ぺしん、と腕を叩かれて、壱琉は軽く笑う。
それから、むくの頭を撫でてから、むくにレモンのアイスを手渡した。
むくの顔を愛おしそうに見つめる壱琉の顔に、風太と汰絽は思わず笑う。
「ね、たぁちゃん! 写真!」
ごみを捨てたむくが汰絽を手招きする。
むくの方へ駆けていき、写真を撮るにはもってこいの赤い橋に行く。
汰絽とむくが並んだのを見て、壱琉がむくの携帯を貰って写真を撮った。
「待ち受けにする〜」
「むく、送ってね」
「うん。たぁちゃんも待ち受けにして」
「お揃いだね」
「えへへ、嬉しい?」
「うん。うれしいよ」
顔を見合わせて笑うふたりに、風太と壱琉は複雑な気持ちになる。
今の待ち受けは、それぞれの恋人とふたりきりの待ち受けだ。
それを変えられるのは少し寂しい気もする。
しかし、仲のいいふたりにそれをやめてくれ、というのは忍びない。
ふたりは仕方ないか、とあきらめのため息を漏らしながら、顔を見合わせた。
「むくー、俺との写真はどうすんだよ」
「んー? たぁちゃんとの方がいいもん」
「はいはい。そうだよな」
ぽんぽんと壱琉に頭を撫でられて、むくは笑みを浮かべた。
壱琉にすり寄って笑っていると、壱琉はいぶかしそうな顔をする。
「やきもちだ」
「何とでもいえよ」
「ふふー。壱琉、やきもちー。やきもちだー」
むくのからかうような声に、壱琉は苦笑しながら耳元へ顔を寄せる。
やきもちだとしたら、お前はどうやって俺の機嫌を取る?
そう問われて、むくは顔を真っ赤にした。
「風太さん、あとで写真撮りませんか」
「ん? おう。写真、いっぱい撮って部屋に飾ろうな」
「はいっ。あと、アルバムもいっぱいに!」
「そうだな」
嬉しそうに笑う汰絽が愛おしくて、風太は汰絽の髪をくしゃくしゃと撫でた。
風太の手をどけようと指先を触れさせた汰絽は、今度はふわりと笑みをこぼして、その微笑みにああ、好きになってよかった、と今更、そう思った。
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