ホットケーキを作りましょう
春のリクエスト祭り
春野家日常
ゆう様
「風太さん、ホットプレート」
「おう」
「むく、これ持っててね」
隣に立っている風太にホットプレートを出すように頼み、それからむくにお玉を手渡した。
ダイニングのテーブルに運ぶ姿を見ながら、汰絽はボウルに入れたホットケーキミックスを混ぜる。
窓から差す日差しの中、三人はホットケーキを作っていた。
「たろ、温めておくか?」
「あ、お願いします。風太さん、この生クリーム泡立ててもらっても?」
「わかった。むく、こっちで生クリーム泡立てるぞ」
「はーい」
むくと共にダイニングテーブルにつき、生クリームを泡立てる。
生地を作り上げた汰絽は生地の入ったボウルをテーブルに置いて、フルーツを切り始める。
今が旬の苺やキウイ、ネーブルオレンジなどを切って皿にのせた。
「たろ、生クリームもできたぞ」
「はーい」
氷を入れた大きめのボウルとフルーツの乗った皿をテーブルに移し、泡だったクリームの入ったボウルを氷の入ったボウルに入れた。
風太が取り皿とフォークを運んだのを見て、汰絽は温かいコーヒーとむく用に入れた牛乳、自分の分のココアを持っていく。
準備が整ったところで、テーブルについた。
「じゃあ、焼きますよー」
そう言ってお玉で生地を掬い、ホットプレートに流す。
丸い形が出来て、むくが嬉しそうに歓声をあげた。
ホットケーキミックスの香りがしてきて、風太もおお、と歓声を上げる。
そんなふたりが愛らしくて、汰絽は思わず笑った。
「この縁のところがキツネ色になってきたらひっくり返しましょうね」
「はーい」
真ん中に置いたホットプレートからいい香りがしてくる。
汰絽がフライ返しを手に取って、ホットケーキの下にさした。
「じゃあ、ひっくり返しますよ」
むくがドキドキと期待に満ちた目で見てくる。
風太はコーヒーを飲みながら、その様子を眺めた。
くるん、とひっくり返ったホットケーキは綺麗なまん丸の形のまま、裏面を焼き始める。
他の生地もひっくり返していくと、美味しそうな香りにむくのお腹がぐうとなった。
「もうちょっとだからね」
「はは、むく、腹ペコか」
「うー!」
フォークを持ったむくがまだかまだかと汰絽の様子を見ている。
風太はカメラを持ってきて、その様子を写真に収めた。
焼きあがったホットケーキを三人のお皿に何枚か乗せていく。
むくのは他のものより少し小さめにして、耳を付けてあげた。
それからクリームやフルーツを乗せ、飾っていくと美味しいホットケーキが出来上がる。
「わあー!! にゃんこさん?」
「よくわかったね、むく」
むくの頭を撫でる汰絽を撮る。
何枚か撮ってから、風太も席についた。
「よし、いただきます」
「いただきまーす」
「いただきます」
挨拶をしてから、三人はホットケーキを食べ始めた。
ふわふわの生地と、程よい甘さのクリームが口の中で混ざって美味しい。
季節のフルーツも甘く、酸味がきいていて、クリームとちょうど良い。
「おいしいー!! たあちゃんー!!」
「んー? おいしいねぇ」
「ふうたおいしー?」
「おう、うまいなあ」
目の前に座る汰絽とむくが嬉しそうにはにかみあっているのを眺め、風太は笑みをこぼした。
そんな風太を見て、汰絽も微笑む。
口の中に広がる幸せな味を噛みしめながら、汰絽はもう一口ホットケーキを口に含んだ。
「今度はクレープでも作ろうな」
風太の言葉に、汰絽は満面の笑みをこぼした。
休日には三人で。
ホットケーキを作りましょう end
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