不器用なヴァンパイア*-12-
「ん…」
目を覚ますと、身体が軋んだ。
自分の腕の中に白く細い腰があるのを見て、思わず身体を起こす。
ベッドに片手をつくとそのままミシリと音を立てて、ベッドが壊れた。
「…は?」
「目を覚ましたんだな」
声の方へ視線を移すと、そこには東雲が椅子に座っていた。
汰絽は膝にブランケットをかけ、眠っていて汰絽の手には痛々しい爪痕が残っている。
それから自分のところだけ沈んだベッドに驚かずにはいられない。
「君は汰絽君に助けられたんだよ」
ぐっすり眠っている汰絽はどこか安心したような表情で、風太は首を傾げる。
動いたらベッドだけでなく他のものも壊してしまいそうで汰絽に触れることが出来なかった。
「…ああ、そういうことか。俺が死にかけてたから、汰絽が俺を吸血鬼に? どうやって」
「汰絽君の血を大量に君が飲むことで身体を変えることが出来る。君は汰絽君の準純血種になったんだよ」
「…あー…」
「汰絽君を恨むか?」
東雲の問いかけに風太はぽかんとする。
それから、首を横に振り笑みを浮かべた。
「まさか。…こいつと同じ時を過ごせるんだろう?」
「そうだね」
「でも俺の血を飲ませることは出来なくなったのか」
「いや、それはないよ」
東雲の言葉に風太はほっとした。
自分以外の血液が汰絽の身体に入り込むのはあまり心地よいものではない。
汰絽は嫌がるかもしれないが、自分はもう、失血死なんてしないのだろう。
「汰絽君は少し特別な存在でね。僕たち吸血鬼は純血種だったら準純血種の血は据えるのだけれど、他の吸血鬼は吸血鬼の血を吸うことが出来ない。ただ、例外が居て、汰絽君の血だけは誰でも吸うことが出来るんだ」
「…へえ」
「汰絽君の血は誰にでも魅力的な香りを発して、誘惑をする。その上に汰絽君の血を飲めば純血種と同等の力を得ることが出来る」
「だから、俺は汰絽の香りがするからあいつらに襲われたんだな」
「そうだ。物分かりが早いね」
東雲の言葉に前に混血種に襲われたことを思い出す。
確かに、今は汰絽の甘い香りでこの部屋が包まれている。
シナモンの香り。
「君はそんな汰絽君の血で変わったから、とても強い力を持っている。その力を汰絽君のために使ってくれ」
「…当たり前だ」
「君が落ち着いたら、その力を生かせるように練習をしよう。君はまだ生まれたばかりに等しい。飢えがひどいだろうから外に出せない」
「…飢え?」
「牙、出てるし、君の瞳は真っ赤だよ」
鏡を見せられると、ああ、と納得した。
汰絽がひどく飢えている時と同じように真っ赤に染まっている。
さっきから鼻をくすぐる甘い香りに身体がうずいてしょうがない。
「あんたは、汰絽の血が飲みたくないのか」
「飲みたいよ。…それにこの子を愛している」
「…」
「けれど、この子が幸せになることが私の幸せだから、君にそれを譲る」
東雲はそういうと、ごゆっくり、と部屋を出ていった。
静かにしまる扉の音もやけに大きく感じるし、窓の外で鳥が羽ばたく音や風が流れる音も聞こえてきた。
「こんな感覚をいつも味わっていたのか…」
恐る恐る身体を動かすと、なんとなく動き方がわかってくる。
今まで通りに動くと強靭な力で周りを傷つけてしまうようだ。
「汰絽…、悪い、くっそ…、甘い匂いが…」
くらくらするくらいの強い誘惑を今更感じ始める。
汰絽のブランケットをはぐと、白い肌にいくつも傷跡があった。
その傷跡はゆっくり治っていく。
ああ、消えるな。
そんな風に思ってしまい、気付いたら、その白い太ももに唇を這わせていた。
「ん…、やぁ…」
汰絽が甘やかな声を漏らしたのを聞きながら、風太は思わずその白い太ももの奥に手を伸ばしていく。
「…あうっ」
ちくりと最初に痛みを感じると次第に身体が痺れ始める。
それが、快楽物質が身体に回り始めている証拠で、汰絽は目を覚ました。
太ももに噛みついている風太に気付き、汰絽は口元を覆う。
指先を噛んで声を我慢していると、じゅるりと濡れた音がした。
「んん…、…あ、…ん」
声を我慢していても、漏れてきて、身体中が敏感に震える。
我慢しきれずに零れだす先走りにもぞもぞと腰を動かすと、ビュクリと白濁が飛び出した。
「…っ、あ、ふうた、さん、まって…、あ、やぁ…っ、」
「…ふ、っく…、甘…、」
「まって…、それいじょ…だめぇっ」
ビクリとおおきく身体が震え、再度達する。
どうにもならない快楽が身体中を駆け回り、汰絽の意識をとろとろと溶かしていった。
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