不器用なヴァンパイア*-11-

風太に手首をぎゅっと掴まれ、押し倒された。
強く握られたせいで爪が刺さり、痛みで思わず眉間にしわを寄せる。
まだ変化の途中の風太は呻きながら、汰絽の上に崩れ落ちた。
風太の体温は変化すると徐々に下がってきて、汰絽のものと同じになる。
まだ体温の上がり下がりが激しく、何度も元の体温になるのを繰り返していた。
その間隔も長くなってきて、そろそろ変化終わる。


「ごめんなさい、苦しいよね…、ごめんなさい」

何度も風太に謝りながら、汰絽は涙をこぼした。
もう変わり始めて一週間が経つ。
自分がへたくそだったのか、風太がとても苦しんでいる。
昔、東雲に効いた変化はもっと早かった気がした。

トントン、と部屋がノックされて、汰絽は扉に開くように声をかける。
するとそこには鮮やかな青色の着物を着た東雲が立っていた。
東雲は金属トレイを手に入り、汰絽の傍による。
押し倒されて、泣いている汰絽を見て、小さく舌打ちをした。


「…まだ変化が終わってなかったようだね」

東雲は、呻きながら汰絽の首筋や肩に噛みつく風太を見て顔をしかめる。
汰絽の白い太ももにたくさんの痕があるのを見て、ため息をつかずにはいられなかった。


「長いな、やっぱり汰絽君の血は特別だからか…」

「…僕が、きっとへたくそだったからです」

「そんなことないよ。君は上手にできた」

汰絽の額に張り付いた髪を避けて、何度も髪を梳く。
風太の身体が弛緩したのを見て、東雲はほっと息をついた。


「でも…、多分、もう終わります。…体温が安定してきた…」

息も絶え絶えで答える汰絽に苦笑しながら、東雲は汰絽の額の汗を拭う。
それから、冷蔵庫から持ってきた輸血パックに穴をあけ、口元に運び、飲むように促した。


「ん…、んう…」

肩に噛みついていた風太は意識を飛ばしたのか、痛みがなくなった。
手首と腰の痕はもう再生できないくらいになっていて、汰絽はその痕さえも愛おしいと思う。
手首の痕を眺めてから輸血パックの血液に汚れた口元を手で拭った。


「終わったみたいだね。あと数時間で目を覚ます。きっと飢えがひどいだろうから、汰絽君も補充しといた方がいい」

いつもならパックひとつで満腹になるが、風太の為を思うともうひとつのパックに手を伸ばさずにいられない。
風太の下から抜け出せないため、そのまま東雲が支えたパックから血を補充した。
もう一パック開けてから、東雲はソファーに腰をおろし風太を警戒しながらふたりの様子を眺める。
風太の下からはい出た汰絽は風太の白い髪を撫でて、ほっとしたように息をついた。


「…君の血を狙うものがまだまだ来るから、彼が目を覚ましたら私のもとで戦い方を覚えないといけないな」

「…僕も、戦わなければ」

「君には無理だよ。君の血は記憶を垣間見ることと、僕らを飢えさせるものだから」

「…でも、」

「大丈夫、彼は強いよ。君の血で変わった子だから。…君の血は特別なんだ。これからは簡単に流さないようにね」

「ごめんなさい」

東雲が微笑んだのを見て、汰絽は目の前が暗くなるのを感じる。
そのまま、背中をベッドヘッドに預け、目を瞑った。
風太の腕が腰に回り、ぎゅっと抱きしめられるのを感じる。
ああ、この手はもう自分と同じ冷たいものなのだ、と思うと少しだけさみしかった。
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