不器用なヴァンパイア*

風太×汰絽 吸血鬼パロディ
※流血シーン、性行為等の表現があるため苦手な方、18歳未満、18歳の高校生の方の閲覧をご遠慮いただきたいです。
※一財閥当主(時雨さんの父)が出てきます上に汰絽さんとややいちゃつきます。


「ここか」

風太が祖父に渡された地図を頼りにやってきたのは、山奥の豪邸。
西洋の貴族でも住んでいそうな屋敷は、真っ赤なバラの庭と一本の大きなリンゴの木があると聞いた。

ここに来たのは、祖父の仕事を受け継いだためだ。
この屋敷の管理と、屋敷に住んでいる人物の世話。
父が受け継がなかったため、自分が受け継ぐことになり中学生の時から薔薇の管理やリンゴの木の世話、掃除の仕方、料理の作り方を習い始めた。
今まで習ってきたことを、ようやく生かすことが出来る。

大きな扉の前で、一息ついてから、金色のライオンの咥えたノッカーを引いた。


「…お? 空いてる」

ぎぃ…、と大きな音を立てて開いた扉に誘われるように、屋敷の中に入った。
屋敷の中は遮光カーテンが閉まっていて真っ暗になっている。
風太が屋敷の中に入ると、風太がいたところに立っているろうそくからポウ…と灯りがつく。
次々と火が移っていき、次第にオレンジ色の光で屋敷の中が見渡せるようになった。
玄関ホールはとても広く、正面には二手に分かれた階段がある。
聞こえてきた足音が妙に冷たくて、心臓を掴まれたように身体が動かせなくなった。


「…すみません。春野と申します。以前祖父がこちらで管理をさせていただいていたのですが、今日をもちまして引退となるので、代わりに…」

ろうそくの火が階段を登っていき、二階にまで伝わる。
明るくなった屋敷の奥から白いYシャツだけ身にまとった少年が降りてきた。
暗い屋敷の中、オレンジ色のろうそくの中降りてくる少年の細く白い足が艶めかしく、風太は息をつめた。


「初めまして…」

Yシャツ姿の少年はぺこりと頭を下げた。
後ろから見ていたら、シャツの中が見えてしまいそうだ、と少しだけ欲を煽られる。
前から見ていても、大きなYシャツから見える太ももがとても魅力的に見えた。


「お話は聞いておりました。あの方のお孫さんですね。…僕は、汰絽と申します」

「…汰絽さん、ですか」

「はい。いいえ、あの、汰絽、と呼んでくれますか? あの方も汰絽と呼んでいましたので」

「あなたがそういうなら」

「それから、あなたが話しやすい話し方で構いません。…これから長く付き合っていくのですから」

「…ああ、分かった」

風太が話し方を変えると、汰絽は嬉しそうに笑みを浮かべた。
裸足の足が恥ずかしそうにもぞもぞと動く。
いつもこの格好なのだろうか、と疑問に思いながら、風太は荷物を担ぎなおした。


「えっと、あなたの名前は?」

「春野風太」

「風太さんですね」

「あんたは、その話し方でいいのか」

「ええ、これが一番身に沁みついてるので。あ、この家で仕事する間のお部屋に連れていきますね」

階段を再度登っていく汰絽の後ろをついていく。
Yシャツの中が見えてしまいそうで、風太は手すりに視線を移しながら後ろをついていった。
蜂蜜色の長い髪は後ろで束ねられていて、汰絽が階段を登るたびに横に揺れるのが目に入る。

階段を登ってから右に進み一番角の部屋に入る。
その部屋は祖父が昔借りていたのか、少しだけ祖父の荷物が残っていた。
自分の荷物をベッドに置き、腕まくりをする。
入口に立っていた汰絽が手招きをするのを見て、すぐに傍に寄った。


「お部屋や厨房の場所を説明しますね」

「いや、…祖父から聞いている」

「そうですか。さすが、あの方ですね」

くすくすと笑った汰絽がそうですか、と噛みしめるように頷いた。
何か違和感を感じたが、その表情がやけに愛らしくてすぐに気にならなくなる。


「…祖父と同じように仕事をする。何か変えて欲しいこととかあったら言ってくれ」

「はい。…今日はあなたの仕事を見てていいですか?」

「ああ、構わない」

そういうと、良かったと汰絽が笑う。
妙に可愛い顔をしているし、可愛い仕草をする。
年下かな、と思いながら、風太は仕事道具を入れたウエストポーチを腰に二つまき、部屋を出た。
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