メリークリスマス!!-3-
「いちっ、すごいよ!!」
「あぁ、すげーな」
「ほんとにすごいと思ってる?」
「思ってる思ってる。お前の喜びようが」
少しむすっとして、壱琉の腕を叩いたむくに、軽く笑った。
近くの夜景の見れるドライブを始めてから、とても良い場所に車を止めて降りて眺めている。
恋人らしいことと言えば、こんなことしか思い浮かばなかった。
むくの喜ぶ顔を見れたらそれだけでよかったのに、とてもうれしそうに微笑むむくに思わず自分も笑ってしまう。
「いちが、こんなデートらしい場所に連れてきてくれると思わなかった」
「…失礼な奴だな」
「だって、いつもマンションばっかじゃん。…まあ、むくは女の子じゃないからそこまで、がんばってくれなくてもいいけど」
「何寂しそうな顔してんだよ。…ここは、春野から聞いたんだよ」
「え?」
「去年のクリスマス、来たんだと。汰絽が喜んでたから、お前も喜ぶだろうってさ」
壱琉の言葉に目を見開く。
少し照れくさそうに煙草を取り出した壱琉の顔を覗き込んで、ぱちぱちと瞬きをした。
「本当? むくのこと、ちゃんと考えてくれた?」
「わかってんだろ」
「…嬉しい」
今度はむくの頬が赤く染まった。
ばっと顔を背けて、ぺちぺちと頬を叩いてるむくを見ていると、軽く笑いがこみ上げてくる。
煙草を片手に、むくの腰を抱き寄せた。
「来年は、夜の水族館でも行ってみるか」
「うん、むく水族館好きだよ」
「そうだと思ってた。夏にはダイバーライセンス取りに行くか」
「もう夏の話?」
「たまにはいいだろ」
嬉しそうににこにこと笑うむくの唇に小鳥のようなキスを送った。
「壱琉、メリークリスマス」
「メリークリスマス」
[prev] [next]
戻る