1111
ポッキー・プリッツの日
風太×汰絽
11月11日。
最近ではポッキー・プリッツの日だそうだ。
コンビニ前で集団をなしていた学生がふざけたようにポッキーゲームをしている姿があった。
コンビニで思わず買ってしまった、ポッキー1箱。
汰絽はそれを手にして、リビングの戸の前に突っ立っていた。
「ただいま」
「ただいまたあちゃんー。どうしたの?」
突っ立ったままの汰絽に、むくが首をかしげる。
中学生にあがってから少し背の伸びたむくは、目線が汰絽より少し小さいくらいまでの高さになる。
「今日は、壱琉のとこお泊りに行くね」
むくがそう言いながら、リビングの扉を開く。
風太に背中を押され、汰絽もリビングへ入った。
「今日はポッキーの日だねえ」
「そ、そうなんだ」
手に持っていたポッキーをエコバッグにとっさに隠す。
それから、冷蔵庫に買い物で購入してきたものを片付け、ソファーに座ったむくの隣に腰を下ろした。
用意してあった鞄を手に取り、むくは立ち上がる。
携帯が鳴り、むくはすぐに電話を取った。
「あ、うん。今行くってば。せかさないでよ、ばか。うん、切るね」
すぐに電話を切って、風太に行ってきます、と告げる。
汰絽にも同じように告げ、リビングを出て行った。
「よっこいしょ」
隣に座ってきた風太にどきりとする。
コンビニ前で見たポッキーゲームをやけに意識していた。
エコバッグに入れっぱなしのポッキーの箱。
なんだか期待しているようで、恥ずかしくなる。
「リモコン」
「は、はいっ」
リモコンを手渡し、そわそわしたまま、元の位置に戻る。
隣に座った風太はそんな汰絽をいぶかしみながら、テレビをつけた。
平和なニュース番組。
あるところの川にアザラシが出た、とか。
そんなニュースを見ているうちに、ゆっくりと落ち着いてくる。
『本日は、ポッキーの日です』
テレビから聞こえてきた声。
びくりと体を揺らすと、風太がんー、と伸びをしながら立ちあがった。
「今日、ポッキーの日か」
「そ、そう、みたいですね」
「そういやぁ、公園でポッキーゲームしてたカップルがいたな」
楽しそうに笑いながら、冷蔵庫に向かう。
風太が冷蔵庫の近くのコルクボードにかかったエコバッグに目を向けた。
「お、ポッキーだ」
中から取り出された、ポッキーの箱。
「あっ」
取り出されたポッキーの箱に、汰絽は自分の顔がかあ、と赤くなるのを感じた。
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