春野家の1日

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春野家の1日


朝、汰絽は風太の腕の中で目を覚ました。
背中に感じるぬくもりに、ほっと息を吐く。
それから、今度は自分の隣に眠るむくを見る。
風太のマンションに来てから、ようやく一番に目を覚ますことに慣れた。
むくと風太が起きないように、そっとベットを抜け出してキッチンへ向かう。



「ん〜…、今日のお弁当なににしよ…」

冷蔵庫を覗き、弁当のおかずを考える。
考えながら、いつも入れている甘めの卵焼きを作った。
それから、ミニトマトとレタスを弁当箱に入れて、卵焼きも入れる。


「ハンバーグと、たこさんウィンナー…あとは、おにぎりかな」

と、手際良く弁当を作り上げる。
まずはむくの弁当箱を詰め、それから自分と風太の分を詰めた。
出来栄えを写真に残し、それから朝食を作り始める。




「風太さん、むく、朝ですよー。起きてくださいな」

「ん〜…ほにゃー! たぁちゃんおはよ!」
 
「おはよ、むく。ごはんできてるから、先にお顔洗っておいで」

「はーい」

洗面所へ向かったむくを確認してから、朝が弱い風太を起こす。
頬をぺちぺちと叩いた。


「おはようございまーす。あさですよー。風太さんってば、起きてください」

「あ?」

「おはようございますー」

風太がやっと目を覚まし、起きあがったのを見て一息ついた。
ふう、と息を吐き出したところで、風太の唇が汰絽の唇に軽く触れる。


「はよ」

「お、おはよう、ございます…」

「照れてる」

「てれてません。…風太さんも早くお顔洗ってきてください」

「はいはい。朝飯は?」

「出来てますよ」

おー、とだれた返事を聞いてから、汰絽はダイニングへ向かった。
ダイニングに入れば、むくはもう自分の子供用の椅子に座って、鼻歌を歌っている。
汰絽が席に着いたときに、風太も部屋に入ってきた。


「ふうた、おはよー」

「はよ、むく」

むくと風太が挨拶を交わしたのを見て、席に着いてから朝食を取り始めた。


「今日は、洋食か」

「昨日和食でしたからね」

「夕飯は?」

「中華にしましょうか?」

「お、わかってんじゃん」

「むく、まーぼーどうふが食べたいな」

「うん、そうしようか」

朝食を取っているのにもかかわらず、夕食の話を始め、一番先に風太が食べ終わった。
食べるのが遅いむくや汰絽も食べ終わり、食器を流しに運ぶ。
風太が食器を洗い、汰絽が拭いて片付ける。


「むく、歯磨きとお着換えしてきて」

「はーい」

むくのいい返事を聞いて、風太が元気だなーと笑った。
汰絽も同じように笑い、最後の皿を拭きあげる。
2人も、洗面所へ向かった。


「むく、歯磨きできた?」

「うん」

「お口チェックね」

「あー」

口を開かせて、オッケーをだした。
汰絽も歯磨きを済ませ、着替えに寝室へ向かう。
風太は先に着替え終えて、むくの鞄の中身をチェックしていた。


「むく、ほら鞄」

「ん、ありがとー」

「たろ、準備できたかー?」

「はーい、今行きます。あ、あ、お弁当!!」

「もう鞄に入れたぞ」

「あ、有難うございます」

ようやく来た汰絽に、一同はマンションの部屋を出た。


「そっらをとぶー」

「ヒーロー」

「みんなのちきゅーをまーもる」

汰絽が右手、風太が左手を握って、幼稚園へ向かった。
むくと汰絽の歌声に、微笑ましい光景が繰り広げられる。
そんな歌声が終わるころ、幼稚園につく。


「むく、いい子にしててね」

「うん!」

「むくはいい子だからな」

「そうかなー。ふふーっ。ふうたもいい子!」

「そうか。よし、たろいくぞ」

「はい。じゃあね、むく。今日は早く行けるから」

「はーい! いってらっしゃーい」

「行ってきます」

「おう、行ってくる」

むくの元気のいい声を聞いてから、今度は風太と汰絽が学校に行く番。
汰絽と風太が出会ったあの人通りの少ない道を進む。
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