お揃いでもいかがですか-3-
すっと離れた手に少し寂しい気がした。
風太はそんな汰絽に気付いたのか、ぽんぽんと肩を叩く。
顔を上げた汰絽は、ごめんなさい、とでも言いたそうな顔をしていた。
「うちに帰ったら、うんと甘やかしてやるよ」
ぼそっと聞こえた呟きに、小さく頷いて、歩みを進めた。
「どこか行きたい店あるか?」
「いえ、特に。甘いものも食べれましたし。お洋服も買っていただきましたし」
「そっか。じゃあ、最後にあの店」
そう言って、風太に連れられる。
入った店はアクセサリーショップだった。
きらきらとしている棚を見て、汰絽は新鮮な気持ちになる。
気にしたことすらない店に、きょろきょろとした。
「初めてか?」
「はい。きらっきらですね」
「はは。そうだな。…ここ、オーダーメイドで作ってくれるんだよ。頼んでたの取りに来たんだ」
へえ、というと、風太がカウンターへ歩いていく。
その後ろをななめがけのショルダーを握りながら歩いた。
「受け取りで。あ、はい、春野です」
受け取っている風太を眺め、気がすんだのか、汰絽は店内を見渡す。
どこか外国のような店内に、わくわくした気持ちになり、汰絽は風太から離れる。
棚には銀細工が施されたものが置いてあり、それを眺めた。
ピアスやネックレス、ブレスレット。
どれも綺麗で、手に取って眺めていると、風太に声をかけられた。
「なんか欲しいものあるか?」
「いえ。…終わりました?」
「おう。じゃあ、夕飯食って帰るか」
店を出て、ぶらぶらと歩く。
途中にあったファミリーレストランに入り、2人は落ち着いた。
「あ、パスタにしようかな。あー、でも、ふわふわのオムライスも…」
「俺がパスタにするから、お前オムライスにしろよ」
「え、いいんですか?」
「ああ。ちょうどパスタ食べようと思ってたからな」
「じゃあ、お願いします」
ぽんと、音が鳴り、汰絽が小さく微笑む。
楽しみなのか、足をゆらゆらさせていた。
「ドリンクバーはどうする? りんごジュースの単品にするか?」
「あ、りんごジュースでお願いします」
店員が来て、注文を済ませる。
ごそごそと先ほどのアクセサリーが入った袋をあさる風太を眺めた。
何買ったのかな、と少し興味がわく。
「…これ気になるか?」
じっと見ていたのがばれたのか、風太が苦笑した。
それに汰絽も苦笑いして頷く。
ことん、と袋から取り出したのは長方形の箱が2つ。
「家に帰ってから渡そうと思ってたんだけどな」
少し困ったように笑う風太に、汰絽は目を見開いた。
そんな様子に風太は今度は楽しそうに笑った。
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