泣きたくなる程愛してる

風太×汰絽
性的描写が多めですので、18禁とさせていただきます。
素敵お題サイト様because 四十万様


毎夜、優しく触れる指先に気づいていた。
髪を撫で、額を撫で、頬を撫で…。
それから唇に触れる。
躊躇うように一瞬震えて、それから触れる。


「汰絽…」

優しく、いつもと違う調子で呼ぶ声も、全部。
知っていた。
応えることもできる。
けれど、それに応えるには、勇気がいるわけで…。


泣きたくなる程愛してる


「たろ、はよ」

「…おはよ、ございます」

「眠そうだな」

苦笑しながら笑う風太に、汰絽はふう、と息をついた。
溜息とばれないようについた息は、やけに重たい。
昨晩も、いつもと同じように、風太の指先が唇に触れた。
付き合って、むくと、風太の3人で一緒に寝るようになってから、毎夜毎夜のこと。
昨日、自棄にあの指先を恋しく感じて、全く寝着くことができなかった。
そのため、風太に眠そうだな、と言われても仕方がない。
汰絽はもう一度息をついて、むくを起こしにかかった。


「今日はむくだけが出勤か」

「しゅっきんってなあに?」

「仕事に行くことだよ。むく、ほっぺたついてる」

「ん、取れた?」

「うん、取れたよ」

風太の呟きに、汰絽はどきっとした。
今日は汰絽と風太の高校は創立記念日で、休校となる。
むくはいつもどおり、幼稚園に行かなければならない。
久しぶりの2人きり…、ということもあるのか、風太のことをやけに意識してしまう。
汰絽は3度目の溜息をついて、食器を運んだ。


「じゃあ、俺むく送ってくるから」

「ぁ、はい。お願いしますね」

突然、後ろから声をかけられて、汰絽は振り返った。
それからむくと風太を見送るため、玄関まで向かう。
元気そうなむくの姿に汰絽は笑みをこぼし、むくの頭を撫でた。


「行ってらっしゃい」

「行ってきまーすっ」

「行ってくる」

2人の後ろ姿を確認してから、キッチンへ戻る。
キッチンには、洗いかけの食器が残っていた。
それを洗い終え、洗濯物も終えてしまおう、と洗面所へ向かう。
カゴから洗濯機に移すさい、ポケットを確認する。
自分のから初めてむくのを終え、風太のを確認した時。
かさ、と指先に当たるものを感じた。


「紙…?」

入っていたのは、小さなメモ帳をちぎったもの。
やけに可愛らしいようで、汰絽の胸に嫌な予感がよぎった。
嫌な予感から、その紙を捨ててしまいたいと思うが、思いなおす。
それから、その可愛らしい紙を、見てしまおう、と指をかけた。

(確認するだけ…捨てたらいけないものかもしれないし…)


「あ…」

開けたと同時に、玄関から風太の声が聞こえてきた。
先ほどの紙をポケットに入れて、洗濯物を洗濯機にすべて移す。
洗剤を入れ、スイッチを押してから、風太がいるだろうリビングへ走った。


「あ、ただいま。今日ど…うわ、どうした?」

ソファーに座ろうとしていた風太に飛びつき、汰絽は風太もろともソファーに倒れた。
風太の上に乗り、胸板に頭を押し付ける。
安心したくて縋りつくようにしていると、ぽんぽんと背中を撫でられた。
やけに優しい手付きに目頭が熱くなり、ぽろぽろと涙が零れる。


「たろ?」

答えようにも、嗚咽が先に零れて答えられない。
風太の体温を感じて、余計に涙がこぼれた。
そっと髪を梳かれ汰絽は風太にすり寄った。
優しく背中を撫で、そっと頭を撫でる。
優しい手の温度を感じて、汰絽は腕を風太の首にまわした。

少しだけ背伸びをするように、風太の唇に自分の唇を触れさせる。
風太の肩がぴくりと揺れた。
けれど、汰絽を押しのけるわけでなく、汰絽の口付けに答える。
幼いこどものような口付け。
頬に汰絽が流した涙が零れおちてきた。


「好きです…、風太さん、好き」

「ん? …俺も好きだよ。目元、赤くなってる」

「んっ、あっ」

真っ赤になった目元に指先を這わせ、口付けた。
涙の味がして、そっと舌を這わせる。
汰絽の体が震えるのを感じて、風太は体に反動をつけて、汰絽を押し倒した。


「たろ、どうした? …なんか、あったんだろ?」

「…っ、手紙っ」

「手紙?」

「ジーンズに、入ってたっ…、」

「…あ、あれか。あれがどうした? 不安になること書いてあったか?」

「み、見てないけど、女の子のすきそうなメモ帳…」

ポケットにしまった先ほどのメモ帳をおずおずと差し出すと、風太はそれを受け取った。
それから開いてから汰絽を起こし、紙を見せる。
可愛い絵柄のメモ帳には、達筆な文字が並んでいた。
メモの一番下には絵文字とともに、見知った名前がある。


「あ…、あん先輩?」

「そ、杏から。次の集会の時間帯な。携帯にメールしろって言ってんのに、わざわざメモに書いてくるんだよ」

「えっ、あっ…っ」

「顔真っ赤。…俺が浮気してると思った?」

「…女の子の方が良くなったのかなって。僕、女の子じゃないし…ひ、貧相だから…も、飽きたのかなって」

「あ。あー、そういうことか…。それで不安になったのか?」

真っ赤な顔をしながら、俯いた汰絽は恥ずかしそうに頷いた。
小さくなって消えてしまいそうな汰絽を抱きしめて、耳元へ口付ける。


「クサいセリフだけど、俺、お前だから好きなんだよ」

「ぼくだから…?」

「そう。たろだから…たろだけだから、安心しな。俺はお前しか見てないよ」

「…っ、僕も、風太さんしか見てないから…っ、ずっと好きでいて…っ」

小さな腕がぎゅっとしがみついてきて、風太は抱きしめる腕に力を入れた。
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