風太とむくとゆうの

ほわほわララバイ、8P目のお風呂での話。


汰絽から渡されたタオルと、小さな2人を連れて風太はお風呂場へ向かった。
脱衣所で2人がもぞもぞと服を脱ぐのを確認してから自分も服を脱ぐ。
それから、アヒルをわあっと取り出したむくに微笑みながら、風呂場へ促した。
綺麗で、一般的な風呂場は、風太にとっては新鮮だった。
シャワーを出して先に体を洗うように告げると、むくがスポンジを取り出してボディーソープで泡立て始める。


「お、泡立てるの上手だな」

「そお? ゆうちゃんも上手だよ」

「ほんとだ。結之もうまいな」

「うれしい。…もこもこ」

「そうだな」

結之が嬉しそうにスポンジを泡立てるのを見て、思わず笑った。
むくも結之も楽しげで、風太も同じように泡立てる。
さっと体も頭も洗い、むくと結之の体の泡を落とす。
それから頭を洗う作業に移った。
じゃんけんに勝った結之を、イスに座らせる。


「むく、シャンプーハット貸して」

「はーいっ」

「体冷やさないように、シャワーかけてな」

「わわっ、お水すごーい」

「ははっ。結之、かぶったか?」

「かぶったー」

シャンプーハットを被った結之の柔らかい髪にシャンプーをつけてやわやわと洗いだす。
足をぶらぶらと揺らす結之は楽しそうだ。
シャワーで遊んでいるむくも楽しげで、風太はなんとなく気持ちが温かくなる。
そろそろいいかな、と結之に断りを入れて、シャワーで頭を流す。
気持ちが良かったのか、結之はほう、とため息をついた。


「むくの番だぞー。ほら、被って」

「ぅいー」

「なんだ、今のおっさんみたいな声っ。…お、被るの早いな」

「ふふーっ、むうね、頭洗ってもらうの好きー!! たぁちゃん、上手なんだよー」

「そうか。今度俺も洗ってもらおうかな」

「えー!?」

えーと、不服そうな声を出したむくに笑いながら、風太はむくの髪を泡立てる。
結之に見てな、と一言告げると、むくの髪の毛をもこもこと泡立てて、角を立てた。
某キャラクターとか、いろいろな形にすると、結之も鏡を見ていたむくもきゃらきゃらと笑う。


「ね、風太、にゃんこさんみたいなのして」

「ん? 猫の耳か?」

「ん」

むくの要望に答えて、猫の耳を作ると、結之からはふっと声が聞こえた。
ふと結之の方へ視線を移すと真っ赤な顔をして、ぐでっと浴槽の縁に寄り掛かっている。
頬を触って大丈夫か、と声をかければ、目が回るーと返事が来て、風太は思わず結之を抱き上げ、風呂場を出た。


「たろ!!」

自分にしては珍しく大きな声が出た。
風太はそう思いながら、結之にタオルをかけもう一度汰絽を呼ぶ。


「どうしたんですか?」

ひょいっと顔を出した汰絽に、結之の状況を伝えると、汰絽は手早く結之をタオルで巻いてリビングへ向かった。
流石だな、と思いながら、風呂場に残したむくを思い出し、風太は風呂場へ戻る。


「むく」

「ふにゃー。ふーたーゆーちゃんはー」

「大丈夫。たろがリビングで看病してくれてる。よし、泡流すぞ」

「はあい」

目を瞑ったむくに、風太はシャワーで泡を落とした。
それからむくの体の泡を落として、抱き上げる。
2人で浴槽に漬かれば、むくから気が抜けた声が聞こえた。


「ふうた、…ん、…き?」

「ん? なんだ?」

「ううん、なんでもないー。あっつい、あがるー」

「…? おう」

むくがあっつーいって呟いたのを聞いて、風太はむくを抱き上げ、タオルで包んだ。
身体を拭いて、パジャマを着せるとむくはふふっと嬉しそうに笑った。
肩に別のタオルをかけてやり、2人でリビングへ向かう。


「ゆうちゃん、大丈夫?」

むくがそう汰絽に声をかけるのを見て、風太は首をかしげた。
むくが先ほど聞こうとしてたことは聞き取れなかったが、今のむくを見てそこまで大きなことじゃないか、と思いなおす。
それから、ほっとした顔をした汰絽の、優しい表情を眺めて風太は一度目をつぶった。


end
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