ハロウィン

ハロウィーン記念小説


「ただいま」

小学校から帰り、家のかぎを開ける。
普段はチャイムを押せばすぐに有岬が出てくる。
今日はそうではなかった。


「有岬? いるんだろう?」

静かな部屋に声をかけると、井上は電気をつけようと、手を伸ばした。


「うおっ」

腰元に衝撃が来た。
ぎゅっと腰に腕が回るのを感じて、井上は笑う。


「うーさき。可愛いことして…。どうした?」

ぱちん、と電気をつける。
後ろにいる有岬を撫でて、井上は離れるように促した。


「…う…、有岬、それはどうした」

くるりと一回転した有岬は井上に笑いかけた。
しろいシーツがふわふわと舞う。


「もしかして、お化けの格好?」

こくりと頷いた有岬は井上に手のひらを差し出した。


“トリックオアトリートっ”

有岬の唇がそう動くのを見て、井上はああ、と笑った。


「そうか、今日はハロウィーンか」

“先生、お菓子は…?”

「お菓子今持ってないんだ。…イタズラ、何する?」

“…先生しゃがんで”

有岬がつま先立ちになるのを見て、井上は言われた通りに体を倒した。
きゅっと首元に有岬は腕をまわして、井上の頬に口付ける。


“イタズラ…”

「…可愛いいたずらだな」

井上が笑うのを見て、有岬も笑う。
可愛らしく微笑んでいる有岬を抱き上げた。


「有岬…、トリックオアトリート」

大人げない笑みを浮かべる井上に、有岬は頬を真っ赤に染めた。


end
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