周と井上
旧拍手から(10/01〜10/14)
周と井上
「…先生、大人になれよ」
「沖田、どうしたんだ急に」
あきれた表情をした周に話しかけられ、井上は怪訝そうな表情をした。
新築を立ててから数年。
夜月はトイレに、有岬はブランケットを取りに寝室へ行ってしまい2人きりになってしまった。
周からはあまり好かれていない気がして、井上は少し気まずい思いをしている。
「有岬が昼間うとうとしているのも、腰を痛そうにしてるのもあんたが自重できないせいだろう」
「それに関してはものすごく申し訳ない。胸が痛い」
「なら自重しろよ」
「努力する」
井上はテーブルに置いてあるカップを手に取る。
いれたてのコーヒーはとても美味しかった。
「そういえば、沖田っていつから有岬と仲が良いの」
「ん? …生まれた時からに近い。俺が生まれて、同じ病室で有岬が生まれた」
「へぇ、そうなんだ」
「もともと、俺の実家が桃千家の使用人の家系だったんだよ。俺は有岬付きの使用人」
「ああ、それで…。じゃあ、夜月さんにも使用人がいるんだ?」
その言葉に、周は首を振った。
それから、考えるようにしてから、呟く。
「あの人、人間嫌いだろ」
「ああ…、そういうことか」
周の言いたいことに気付いた井上は、もう一度コーヒーに口をつけた。
夜月の使用人は、きっと羽を伸ばしているのだろう。
周と井上 end
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