眩しい光の先へ-4-
転校前日。
友人に軽く別れを告げ、荷物を車に積んだ。
寮から引き揚げる荷物は少ない。
自宅に帰って、新しい高校へ通う。
前のような、お上品な学校ではない。
公立高校だ。
もう、あの時のような、醜い人間にはならない。
そう決めた。
「生島、光です。よろしくお願いします」
ざわざわと話し声が聞こえる。
転校先も男子校だが、あの閉鎖された空間とは違っていた。
忍とは、アドレスを交換して、今も時々あっている。
最近知ったことは、忍もひとつ年上の高校生だということ。
あの朗らかさから、大学生だろう、と勝手に決め付けていた。
そんな忍から学校のことをたくさん聞いた。
今は水泳部で頑張っていること。
男子校で、中々彼女ができないこと。
むしろ、男に好かれること。
どの話もたわいないもので、とても気が休まる。
席を案内され、腰を下ろしたところで、忍のことを考えていた。
色あせていた日々は、忍を介してみると色鮮やかに見える。
窓から見える先には屋内プールがあった。
「生島君、教科書ないよね」
隣の席から声が聞こえてそちらを向く。
ひらひらと教科書を振って、その生徒は笑った。
「俺馬鹿でわかんないから、良かったら教えて。教科書見せるし」
「…ありがと」
机を寄せて、教科書を見せてもらう。
確かに、少し難しいが、あの学園で習っていたものよりは簡単だ。
隣の生徒がかけられて、困っているところに答えを呟く。
嬉しそうに生徒が笑って、少し自分も嬉しくなった。
「生島君頭いいね」
「そんなことない。…あ、名前、光でいいよ」
「ほんと? ありがと、光。俺は伸太」
「しんた?」
「うん。伸びるに太る」
「…太る」
思わず笑ってしまう。
あ、と思った時は、伸太も楽しそうに笑っていた。
いつのまにか、伸太の周りに人が集まってくる。
伸太のおかげで、すぐにクラスに打ち解けることができた。
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