眩しい光の先へ-3-
「な、うまいだろ?」
差し出されたケーキを食べる。
甘くて、どこか優しい味がした。
「おいしい…」
「兄ちゃんが作るケーキうまいんだよ」
「でも、1人で来るのは嫌っていってたじゃん」
「…そりゃあ、こんな女の子が一杯いる店、怖くて来れないだろ?」
「ああ、確かに…」
思わず笑いが零れた。
男っぽくて、スポーツマンみたいな忍にこの店は合わない。
お兄さんは、綺麗な男の人だった。
「忍って、元気だね」
「そうか。いつもこれくらいだよ。…光は、なんかへこんでるな」
「へこんでる?」
「ああ。なんか、嫌なことでもあった後みたいな」
忍の言葉にフォークを落とした。
初対面の人に、そんなこと言われるとは思わない。
とこまでもまっすぐな人間なんだな。
そんな風に忍の人柄が見えてきた。
「…嫌なことっていうよりも、自分が醜い人間だって気がついただけだよ」
「誰だって醜いさ」
「忍は、まっすぐでいい人だと思うんだけど?」
嫌味に聞こえただろうか。
まっすぐな彼を見ていると、少しだけ苛つく。
それはたぶん、八あたりに近い感情なのだろう。
「俺は兄ちゃんがうらやましくてしょうがない。一時期グレてて、兄ちゃんにけがさせたんだよ」
「…忍が?」
「おう。まあ、大した怪我じゃないけど、あの時はさすがにこれじゃやばいって思ってさ。変わろうと思った」
「…」
「ま、初対面の光に言うのはおかしいけど。なんか、お前ほっとけないんだよ」
「…変な奴」
忍が笑う声が妙に心地よかった。
まるで、許されたような気がして。
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