眩しい光の先へ-2-
寮に戻るとすぐに着替えを済ませる。
一刻も早く、この息苦しい場所から逃れたかった。
…逃れることは、できないのだけれど。
先生も、彼も、ここから立ち去る時、どんな気持ちだったのだろうか。
転校まで数週間。
毎日、考えている。
寮を出て、急いで柵を飛び越える。
頑丈な警備も、奥の方からは楽々と外に出れた。
後は、歩いて町まで降りるだけ。
少しでも、遠くへ行きたい。
足取りが速かったのか、町へはすぐに付いた。
学園とは違った、華やかさに目を細める。
「わっ、」
「…っ、」
「…ごめん、大丈夫?」
手を引かれ、無理やり立ち上げられた。
つきりと手が痛み、声が漏れる。
「…また、やっちゃったか。痛かったよね。加減できなくてごめん」
「そんなこと、ない。俺もぼんやりしてたから」
「そう? あ、転ばせたお詫びに、美味しいもの食べさせてあげるよ」
「えっ!?」
握られた手を引っ張られ、足がもつれそうになる。
けれど、感じた爽やかな香りに、振り払うことができなかった。
「ここ、俺の兄弟がやってる店。…1人で行くの嫌だったんだ」
「…俺がもし断ったらどうしたのさ」
「あ。…考えてなかったなぁ。いつも突っ走っちゃう癖があるから、今日もやっちゃったな」
大きく口をあけて笑う男に、呆気にとられた。
学園にいる生徒はみんなどこか上品で、男子校にもかかわらず、穏やかで。
どこか大人びていて、大人の世界にいるように感じていた。
こんな人間がいるのか、そう思ってしまい、まじまじと男を見る。
「ん? あ、そういえば、名前なんて言うの? 聞いてなかったな」
「…生島光」
「光、ね。俺は、小国忍」
「忍…」
「光、甘いの好き?」
「まあ、食べるけど…」
そう呟くと、忍は嬉しそうにカウンターの方へ手を振った。
きらきらしてて、明るいイメージ。
きっと、俺みたいな、惨めな思いはないのだろう。
楽しそうな忍が、眩しく思えた。
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