その後のお話
「海のほう走るか」
こくりと返事。
海のほうは船の明りがちらちらと見える。
以前、時雨が海は良いよ、と教えてくれた。
車を走らせること数十分、海に着いた。
遠くに船の明かりがぼんやりと空を照らしている。
外に出ると、有岬が携帯を開いた。
かちかちと文字を打つ。
“奥の光は、船?”
「ああ。漁業船かね」
“綺麗。星も見える”
「そうだな。降りてみるか」
“うん”
手を繋いで、砂浜に続く階段を降りる。
井上の手が温かくて、ほっと息をついた。
ブランケットを肩にかけてもらい、有岬は井上のそばに寄る。
「おっ、海水が透明だから綺麗だな」
“うん、すごい”
ぽちゃん、と音がして水がぽわあと光る。
有岬の携帯についていた、光るキーホルダーが落ちたようだ。
海が淡い光できらきらした。
「有岬っ」
携帯を片手に持ち直し、有岬が海の中へ手を伸ばした。
冷たかったのか、ぴくりと体が動く。
有岬はふるふると拾ったキーホルダーを振った。
すぐに有岬の腕をブランケットで拭く。
あわてた様子の井上に有岬は笑った。
“僕、もうそんなに体弱くないですよ”
「…すまん。つい、」
“道幸さんも、周も、心配しすぎです”
クスクスと笑いながら携帯に文字を打ち込んだ有岬に、井上も小さく笑った。
成長してから、体調もすこぶるいい有岬にほっとする。
そっと肩を抱いて、温めるようにした。
「俺はこの先もずっと、お前のこと過保護にしちゃいそうだな」
“そうですね、でも、それでいいかも”
「ん?」
“そうしたら、道幸さんとずっと一緒にいれる”
微笑んだ有岬に、井上は頷いた。
それからぎゅっと有岬を抱きしめて、小さく笑った。
end
後書
リクエスト内容
その後のらぶらぶな話
質問(有岬くんの声って出るようにならないんでしょうか)
甘々になったでしょうか。
井上と有岬は時々小旅行的にデートしたりしてます。
らぶらぶに一生を過ごしそうですね。
質問回答はあとがきの下に書かせていただきます。
ずっと過保護な井上と周。
夜月さんはだんだん有岬への接し方がわかり始め、過保護から抜けだします。
色々考えながら書かせていただきました。亜祈様、リクエストありがとうございました。
先生と僕を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
質問回答
有岬の声は、いずれは出るようにしたいと思ってます。
もともと、治らない予定だったのですが、いずれ…。
先生と一緒に声を出す練習したりして、治ることを期待します。
番外編で、声の話とか、書きたいと思っていますので、
もし、機会がありましたら、また読んでいただければ幸いです。
[prev] [next]
戻る