私の愛すべき強さ
完結記念リクエスト
けめこ様
私が愛すべき強さは、私がかつてなくした強さだった。
どうか永遠に、私の強さでいてほしい。
愛おしい、私だけの周。
私の愛すべき強さ
「夜月さん、どうしましたか」
リビングで眠っていたようで、夜月はだるい体を起こした。
風邪をひいたようで、体が思うように動かない。
その様子に気付いたのか、周が不安そうに肩に手を置いてきた。
「だるいみたいですね。…寝室に行きましょう?」
「…げほっ、…あぁ」
立ち上がり、体を支えられる。
ゆっくりと歩みを進めて、寝室に入った。
新築の、まだ少し慣れない部屋。
ベッドに横になると、体温計を渡された。
脇に差し、待つこと数分。
体温計が安っぽい音を立てた。
「…38.0度。結構高いですね。風邪薬とタオルとか取ってきますよ」
体温計をサイドボードに置いた周が部屋を出て行く。
部屋がしんとして、急に心細くなる。
子供でもないのに、と夜月は寝返りを打った。
幼い頃、有岬だけでなく自分も喘息を患っていた。
今ではもう完治していて、体に支障はない。
けれど、なぜか心細くなった。
まるで、発作を起こした子供の時のような感覚。
足音が聞こえ、周が戻って来る。
開いた扉にほっと息をついた。
「薬も飲みましたし、あとはゆっくり休んでいてください」
ベッドに腰をおろしながら、夜月の髪を梳く。
周は、顔には出さないが、心細く思っている夜月の心に気付いていた。
何度も、優しく、髪をすいていたら、夜月が安心したように緊張を緩めるのを感じる。
「夜月さん、俺も横になっていいですか」
「…構わないが、うつっても、私は知らない」
「平気ですよ」
ごろん、と隣に周も横になる。
温かい体温を感じて、悪寒が少し良くなった。
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