甘くて、甘くて-2-
「それより有岬」
なあに、とでも言いたそうに首をかしげる。
2人でダイニングに朝食を運んだ。
ごめん、座ってからね、と、言うと、こくりと頷く。
朝食を運び終え、テーブルに着いてから、井上は微笑んだ。
「いただきます」
“いただきます”
しっかり挨拶を済ましてから、朝食をはじめる。
有岬の小さな指先がトーストを挟んだ。
“おいし…、先生、おいしい”
「そう? 良かった。有岬もすぐにできるようになるよ」
“うん、がんばる”
嬉しそうに有岬の入れた紅茶を飲みながら、朝食を進める。
「有岬」
“なあに? 先生”
「いつまで、先生って呼ぶ?」
“へ?”
有岬が朝食を食べ終えたころ、井上は有岬に問いかけた。
紅茶が少し口元について、その水滴を掬い唇に触れる。
「有岬は、俺と暮らし始めたのに、ずっと先生って呼ぶつもりかな」
“せ、せんせい、あの、”
「俺も有岬に名前呼んでもらいたいな」
少ししょんぼりしたように言う。
有岬は困ったように眉を下ろした。
「練習しよっか。道幸って」
“…み、ち…みちゆきさん”
「上手だ」
立ち上がって、そっと口付ける。
それから有岬の分と自分の分の食器を運び、井上は有岬を抱き上げた。
「今度先生って呼んだら、どうしてやろうかな」
“意地悪しないでっ”
「んー? 意地悪じゃないだろ。有岬のほうこそ意地悪だよ」
“僕のほうが…?”
「ずっと俺の名前を呼んでくれないなんて、寂しいだろ」
ちゅっと口付けながら呟くと、有岬がこくりと頷いた。
それから、そっと道幸さん、と呟く。
声を聞きたい。
それは強く思うけれど、有岬の甘やかな唇が名前を紡ぐだけでいい。
そんな風に思い、井上は有岬にもう一度口付けた。
甘い味がしたような気がして、2人はそっと目を瞑った。
後書
リクエスト内容
井上先生と有岬のでろっでろに甘いお話
はれ様、リクエストありがとうございました。
一番最初のリクエストでとてもうれしかったです。
先生と僕を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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