夢の行き先

完結記念リクエスト
匿名様


「夜月さん、家を建てようと思ってるのですが」

「私もそろそろだと思っていました。土地は私の土地を」

「いいんですか?」

そんな話がリビングから聞こえ、有岬は周と目を合わした。


夢の行き先


井上と付き合うようになってから半年が過ぎた頃。
毎晩のように家のことで話し合う井上と夜月の姿が目に入った。
先に布団に入るのが嫌なため、リビングで本を読みながら2人の話が終わっているのを待っていると、周が隣に腰を下ろした。


「井上もすっかり夜月さんと仲良くなったよな。今じゃ家の間取りまで決めてるぞ」

“家って…引っ越すの? みんなで”

「は? 何言ってんだよ。みんなじゃないよ。…って、聞いてなかったのか?井上から」

“なんのこと?”

きょとんとしている有岬を見かねたのか、周は井上を呼ぶと、ぼそっと呟いて、夜月のもとへ行った。
夜月は今日はこれで、というと、周と2人、どこかへ行く。
井上は苦笑しつつも有岬の隣に腰を下ろした。


「説明するのを忘れてた」

そういながら笑う井上は、有岬のために置いてあった麦茶を一口貰う、と飲む。


「有岬、そろそろ、2人で暮らさない?」

“2人?”

「ああ。もちろん、夜月さんや沖田のすぐそばでだけど。小さい家を建てて、2人で過ごさないかな、って」

“…”

少し曇った顔をした有岬に、井上はあれ、と首をかしげた。
喜ぶと思っていたこの話に、早かったかな、と考え直す。
有岬は有岬で何か考え込んでいた。


「有岬、嫌なら嫌って言ってくれて構わないからな?」

“あ、あの、嫌じゃないんです。でも、その…”

有岬が言いづらそうにしているうちに、夜月と周が戻ってきた。
その手にはコンビニの袋が握られている。
小腹がすいたから、ケーキでも、と夜月が微かに笑った。
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