Remember-5-
甘いケーキとジュースを食べて、2人は他のアトラクションへ向かった。
次に向かったのはジェットコースター。
井上の苦手なものだが、今回は井上のほうから乗ろう、と誘った。
有岬は井上の手を握りながら、大丈夫? と問いかけると、平気、と井上は笑った。
“道幸さん、ほんとに平気?”
「大丈夫だって。修学旅行の引率の時に乗りまくったんだよ」
“なら大丈夫だね”
「ああ」
安全バーが下ろされ、機械音が聞こえ、ゆっくりと動き始めた。
「…だろ?」
“ほんとだ…。道幸さん、すごい”
「格好悪いからな。俺は有岬の前ではできる限り格好いい俺でいたい」
“…道幸さんは、いつでも格好いいよ”
「…有岬?」
“なんですか?”
「いや、…なんでもない。ああ、暗くなってきたね。パレード観に行こうか」
そう話しているうちに、パレードの合図の花火が上がる。
2人はパレードの見やすい水晶の兎で飾られた城へ向かった。
「よかった、座れる場所あるな」
“うん”
階段の一番上に腰をかけられる。
2人はそちらへ向かい、ゆっくりと腰を下ろした。
“綺麗…”
夕暮れが、夜に変わり、パレードは始まる。
きらきらと輝く乗り物に乗ったブランシュの仲間達が踊ったり、テーマソングが流れた。
眺めていると、花火が上がる。
赤や青、緑のたくさんの色が暗闇にあがった。
「有岬、こっち向いて」
井上に呼ばれ、そちらに振り向く。
優しい顔をした井上は有岬が振り向くと、そっと井上は有岬の頬を両手で挟んだ。
“先生…?”
「久しぶりだな、その呼び方」
“あ…”
「有岬、お前と一緒になれて良かった。もう一度ここに来れて良かった」
“うん、僕ね、ずっと先生のこと待ってた”
「ああ」
“僕も、もう一度ここに来れて、良かったよ”
うっすらと涙の浮かんだ有岬の瞳に吸い込まれるように、井上は有岬にキスした。
さっと重ねた唇はすぐに離れるけれど、井上はそっと有岬の涙を親指で掬う。
もう一度口付け、2人はパレードに目を向けた。
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