Remember-3-
ブランシュの家は、ニンジン型の乗り物に乗って家の中を探検するものだった。
アトラクションから出てきた有岬が楽しかった、ととても喜んでいる。
「次は神秘の洞窟に行かない?」
“あ、お船に乗るやつ?”
「あぁ。どう?」
“うん、乗りたい”
やっぱり連れてきてよかった。
有岬は始終笑顔で、井上は安心する。
安心したのはいいが、別のことが気になって仕方がない。
周りからの有岬への視線が気になる。
主にそれは男性からの視線で、ときどき女性からも視線を浴びていた。
気になるものは気になる、と井上は有岬に熱い視線を送っている後ろの2人組みを睨んだ。
くい、と腕をひかれて有岬を見ると、どうしたの、と問いかけられる。
なんでもない、と答えると、有岬は首かしげながら、行こう、と井上の手を引いた。
“ドキドキしてきた”
「そうだな。結構怖いらしいけど、大丈夫?」
“お化けじゃないから怖くないよ”
「ほんとか?」
“ほんとですっ”
「そういうことにしといてあげる」
探検に出るような船に乗り込むと、そこは2人掛けで、有岬達は真ん中あたりに案内された。
先に座った有岬の頭をぽんぽんと撫でると、有岬がはにかむ。
すねた時にこうすると、有岬はすぐに機嫌を直す。
可愛いな、と笑っていると、船が出発した。
「こんにちはー!! 危険な探検に乗り出してくれた…」
スタッフの明るい声に有岬の顔がわくわくしたものになった。
他の乗客もわくわくとしているのか、一番後ろの席の子供が嬉しそうに声をあげている。
怖くなるよ、という演出か、禁止事項を上げる。
「でも、隊長は強いから大丈夫! 安心して探検を始めよう!」
船は森の中を進んでいく。
太陽の光は屋根に遮られ、ちょうどいい明るさだ。
「あ! あそこに大きな鳥がいるね。なんていう鳥かなぁ」
船長の声を聞きながら、そちらを向いていると、大きな鳥が羽ばたいていた。
綺麗な羽、と有岬が眺めている。
“道幸さん、見て、おさるさん”
有岬が指さしたところには、子猿が3匹遊んでいた。
進んでいくうちに、動物達が水浴びしている場所に着く。
船を止めて観察しよう、と、船が止まると、大人の象が水浴び最中に船に水をかけてきた。
“濡れちゃった”
「結構濡れたね。暑いからすぐ乾くか」
“うん”
楽しく笑っているうちに、船が再度出発した。
進んでいくうちに暗い森の中に入っていく。
大きな木に覆われた暗い中を進むうちにだんだん怖くなってきた。
怖さから船の端にいた有岬は井上にすり寄る。
「怖いの?」
“怖い”
「手繋ごうか?」
“うん、ぎゅってして”
乗った時の勇敢な有岬は、怖い、と井上の手を握った。
ぎゅっと握られた手に井上は軽く笑う。
船はだんだん進み、暗い洞窟を前にした。
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