Remember

完結記念リクエスト
真咲様より


生活も落ち着き、有岬の体調も良い。
井上は有岬との思い出の地である、遊園地を思い出していた。
たくさんのうさぎ達であふれかえったあの遊園地を。
落ち着いてから、今度は恋人同士として、あの場所へ行きたい。
その思いから、井上は有岬の帰宅を待っていた。

今日は隣の夜月宅に顔を見せに行っている。
たまには1人で行動しなきゃ、と有岬が1人、歩いて行った。

玄関から鍵をあける音が聞こえ、井上は玄関へ向かう。
少し暑そうに額を拭った有岬が、井上に笑いかけた。


「おかえり、有岬」

“ただいま。道幸さん”

手を洗っておいで、と背中を押すと、有岬は洗面所に向かう。
井上は一足先にリビングで有岬を待った。
机の上にはチケットとパンフレット。
今回は、遊園地にあるリゾートホテルに宿泊しようと考えている。
サプライズみたいになるかもしれない。
少し気恥ずかしくなり、井上は1人咳払いをした。


「有岬、夕飯食べてきただろ?」

“うん。道幸さんは、僕の作ったの食べた?”

「ああ、食べました。上手になったね」

“良かった。道幸さんが教えてくれたおかげだよ、ありがと”

「どういたしまして。…有岬、あのさ」

急に真剣な顔つきになった井上に、有岬は少し驚いた顔をしながら、井上を見る。
話しを聞くときはちゃんと相手の顔を見て聞く子だ。
なんて、自宅にいるのに教師である時のように考える。
そんなことを考えていたら、少し笑えてきて、井上は軽く笑った。


「…ブランシュに会いに行かないか?」

そう問いかけると、有岬の顔がぱあと明るくなった。
こくこくと何度も頷く様子に、井上はほっと息をつく。
きゅっと握られた手が少し熱くなった。


“いつ、いつ? いつ行くの?”

嬉しくて仕方ないのか、聞いてくる有岬はそわそわし始めていた。
有休を取っておいてよかった。
有岬の予定は前もって聞いてあったから、明日の夜には出発できるだろう。


「…明日の夜、出発にしよう」

“うん。道幸さん、ありがと”

きゅっと飛びついてきた有岬に、井上は抱きしめ返す。
クーラーの効いた部屋での抱擁は、どこか心地よい感じがした。
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