強がりな弱い人-2-

夜月が首筋に触れた手に、掴んでいたもう片方の手を解放した。
周は耳から唇を離した夜月の首に解放された手を首筋に触れさせる。
両方の親指をのど仏に当て、徐々に力を入れていく。
一瞬、夜月が苦しそうな顔をしたのが見えた。


「俺が、あなたを捨てるときは、あなたが俺を捨てる時だ」

震える手は、夜月の酸素を奪っていく。
夜月が周の黒髪を撫でた時、力の入った手はベッドの上に落ちた。
急に入ってきた酸素に、夜月はせき込む。
夜月はせき込みながら、周の上に体を落とした。
夜月の重みが体を満たして、腕を背中にまわす。
きゅっと夜月を抱きしめ、周は息をついた。


「捨てられる前に、いっそのこと一緒に…」

その先は、言わない。
夜月を甘やかす言葉はあげない。
周はそっと目をつむって、夜月が息を整えるのを待った。



「痕、残りましたね」

「…まるで首輪のようだ」

表情の滅多に変わらない夜月が、一瞬笑ったのを感じた。
そっと首に残った手の痕に、指を這わし、その痕に口付ける。


「お前から貰った痕は、心地よいものだ。私の不安を、少しずつ和らげていく」

「…」

「まるで、精神安定剤のようだ」

吐息のような囁きが耳に触れて、隣に横になる夜月に口付ける。
唇には触れずに、先ほどの夜月なようなキス。
大丈夫、と言い聞かせるように、今度は額にキスを落とした。


「あなたは、弱い人なのに、強がる」

「…それが、私という人間だ」

「そうですね。…おれは、そんなあなただから、傍にいる」

夜月の大きな手が不意に周の唇に触れた。
親指で何度もなぞる。
くすぐったい感触に、周は困ったような表情をした。


「ここに、口付けてもかまわないか」

優しく訊ねるような声に、周は小さくええ、と答えた。

そっと触れてくる甘やかな唇に、1滴、涙がこぼれた。


end

後書
リクエスト内容
 周と夜月さんでらぶ

周と夜月さんの話でした。
この2人は、お互いに依存しあって生きていくような気がします。
元々、周は有先と井上が新居を構えた段階では、
婚約者と新居を構える…という方向で進めていました。
夜月についてはなにも考えていなかったのですが、
夜月にも、周にも幸せになってほしくて、2人を最後幸せにしてあげようと思いました。
お互いに依存しあい、結果心中とかあり得そうですが、
その点は皆様の想像力に任せます。
匿名様、リクエストありがとうございました。
先生と僕を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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