強がりな弱い人

完結記念リクエスト
匿名様より


天窓から入る月明かり。
天井から下りる、柔らかな電気の明かり。
少し硬めだけれど、寝心地の良いベッド。
本棚に埋まった部屋は、周のお気に入りの部屋だ。

夜月の別宅に居住を移してから月日が流れた。
井上と有岬が再開してから1ヶ月程経つ。

不意にそんなことを思い出し、周は天窓を眺めた。
今日は満月だ。
思い立って、電気を消してみると、黄色い光が室内を照らす。
心地よい明かりで、周は読みかけの本に視線を落とした。
有岬が井上と新築に移る時にもらった本。
指先で文字をなぞる。

コンコン、とノックが耳に入り、周は返事をした。


「どうぞ」

静かに扉を開いて入ってくる。
疲れたような表情をした夜月は、部屋に入って来て早々、周のベッドに乗り上げてきた。


「どうしました?」

優しく問いかけると、夜月は周の手から本を取り、テーブルに置く。
それから周をベッドの上に押し倒した。
切れ長の目から滴が1滴、頬にこぼれてくる。
そっと掴まれていない片方の手で、目尻を拭った。


「周、お前は私を捨てないよな」

いつも通りの、上からの言葉。
拒否なんてできない、言い方に、周は小さく苦笑した。


「…俺が、あなたを捨てることができると思ってるんですか?」

そう呟くと、夜月があぁ…、と小さく漏らす声が聞こえた。
夜月はきゅっと締めたネクタイを緩めると、周の唇に自身の唇を触れ合わせる。
下りてきた陰に、周はそっと目を瞑った。


「周…」

何度も名前を呼ぶ声に、うっすらと目を開く。
唇には触れず、口の端にキスが落とされた。
鼻先から頬へ、頬から目尻へ、こめかみへ移り、髪を流される。
あらわになった耳を、あでやかな色をした舌が一瞬触れた。
ちゅっとリップ音がして、そのあとに痛みが襲う。
耳たぶがひどく痛み、周は真っ白なシートを握りしめた。


「頼むから、どこにも行かないでくれ」

夜月が小さな声で呟くのを聞いて、シートを握りしめていた手を離した。
震える手でそっと夜月の首に触れた。
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