優しい気持ち

完結記念リクエスト
お花畑*様より


周の務めている、県立の図書館。
ここ一帯では一番大きな図書館だが、利用者はとても少ない。
そんな、居心地良い図書館の中庭に、有岬は先月仲良くなった友人達といた。


「うさちゃん、クッキー食べる?」

“食べたい”

「紅茶も入れてきたからね」

汰絽と椿から紅茶とクッキーを受け取る。
木のベンチとテーブルは使い心地がよく、有岬達3人はゆるゆるとした時間を過ごしていた。
椿の作ったクッキーを食べながら、汰絽の入れた紅茶を飲む。
どちらもとてもおいしくて、有岬は微笑んだ。


「おいしい?」

椿の質問に、こくりと頷いた有岬は図書館の中で何かを話している井上達を眺める。
1冊の本を3人は見ながら、険しい顔をしていた。
不意に井上が誰かを手招きしたのを見て、有岬は目を細める。
井上が手招きした相手は周だった。
黒髪が伸びた周はいまどきの若者のような風貌。
格好よくなったな、とか思いながら、有岬は井上と周を眺める。
いつの間にか、時雨と風太が館内を出て中庭に向かってきた姿が目に入った。


「風太さん、お帰りなさい」

「おう。意外と外も涼しいな」

「はい、でも日差しが強いです。日陰行きましょう?」

汰絽が幸せそうな表情で風太に駆け寄るのを見る。
年の近いカップルで、いつも汰絽が風太に寄り添い、まるで夫婦のようだ、と有岬は眺めた。
椿は時雨が戻ってくるのを待ちながら、クッキーに手を伸ばす。
戻ってきた時雨は椿の隣に腰をかけ、頬を撫でた。


「それは今日作ったクッキーだね」

「うん。時雨さんもどうぞ」

「ありがとう」

時雨と椿のカップルは年の差は有岬と井上と同じだが、とても仲の良いカップルだ。
椿を溺愛しているのがわかるし、椿も時雨を深く愛していることがわかる。
頬についたクッキーを時雨が指先でとり、自らの口元に運んだ。
2人供穏やかな表情をしていて、見ている有岬もほのぼのした気持ちになった。


「有岬君、井上はもう少ししたら来るからね」

“なんのお話していたんですか?”

「ん? ああ、井上は経済についても詳しいから、風太君が事業立ちあげるのの相談に乗っていたんだ。周君とは何を話しているか俺はわからないな」

時雨が言うのを聞き、有岬はそっか、と頷く。
それから椿の作ったクッキーに手を伸ばした。
風太達がテーブルに戻ってきて、四角いテーブルの有岬と椿達の間に腰を下ろした。
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