焼くほど美味しくなりますよ-2-
「有岬」
“先生?”
ぱっと振り返った有岬は、井上が少し不機嫌そうなことに気付き、首をかしげた。
それから、自分の隣に座った井上を覗き込む。
そんな有岬の様子に苦笑しながら、井上はただいまのキスを有岬の頬に落とした。
「先生じゃないだろ、有岬」
井上はそう言いながら、有岬の切りそろえた前髪をずらした。
もう一度額に口付けると、有岬がくすぐったそうに身をよじる。
“道幸さん、おかえりなさい”
「ただいま。沖田、久しぶりだな」
「1週間ぶりですね」
一瞬、井上の目は目を細めた。
あまり良い視線ではない。
その意図に気付いた周は、空になった弁当箱を片付けて、有岬の鞄にしまった。
「うさ、仕事に戻るよ。…先生、いじめるなよ」
「…余計なお世話」
ぼそりとかわされた会話に気付かずに、有岬は周にまた、と伝える。
「弁当美味しかった。また作ってくれ」
こくりと頷きながら手を振る。
館内へ入る道を歩く周の後ろ姿を眺めた。
不意に、井上の大きな手が有岬の頬を挟む。
くいっと、上を向かされ、有岬は目をぱちくりさせた。
「妬けるな…」
“なにをやくの?”
「ん? …有岬と沖田の関係」
“周と僕の?”
「俺という旦那様がいるのに、他の男に頭撫でられてるのがちょっと妬けただけ」
井上が不服そうな顔をしながら呟くのを聞いて、有岬の表情がはっとしたものになる。
それから急激に真っ赤になっていく有岬に、井上は軽く笑った。
わかった? そう問いかけると、有岬はこくりと頷いた。
「俺は、有岬にとって沖田が親友って言葉にくくれないくらい大事な存在ってわかってても、嫉妬するくらい、心が狭いからな」
そう囁きながら、唇にキスを落としてくる井上に、有岬は膝をもじもじとさせた。
溺れるくらいの深い愛が有岬には心地よい。
嫉妬という醜いものでも、とても心地よいものに感じた。
心地よさに溺れたいのか、有岬は井上の首に腕を回す。
「いっそのこと、海外で結婚でもしてこようか」
冗談半分の囁きが唇に触れる。
井上はそっと有岬のさらさらの髪を撫で、体を離した。
「有岬、弁当あるよな?」
“うん、道幸さんだけの”
薄紅色の唇がそう動いて、井上はこっそり笑みを零した。
嫉妬させてから、しっかりと甘やかしてくれる。
無意識でそれをこなす有岬に、井上は深みにはまっていくのを感じた。
焼くほど美味しくなりますよ
end
後書
リクエスト内容
先生と有岬で嫉妬後甘々
有岬と周がいちゃいちゃするのをかくのが好きです。
こんないちゃいちゃしてていいのか、ってくらいいちゃいちゃさせてしまいました。
今後、こんな2人に井上や夜月さんは四苦八苦するのでしょうね←
嫉妬後甘々、なんて良い響きでしょうか。
とても楽しかったです。
リクエストありがとうございました。
先生と僕を最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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