ふんわりとした-4-
「うさちゃん、楽しい?」
“たのしい。海あんまり来ないから”
「よかったー」
汰絽と椿が笑みを零したのを見て、有岬も笑う。
ズボンが汚れないように砂浜に腰をおろして、波に足をさらす。
とさっと、砂浜に寝転がると、太陽の日差しが心地よかった。
「うさちゃん、これからも一緒に遊ぼうね」
“うん。今度は僕のお友達も連れてくるね”
「お友達、どんな人?」
椿が興味津津とばかりに聞いてくる。
そんな様子に有岬は笑いながらボードに書き込んでいった。
“周っていってね。格好よくって、優しくて、僕の大事なお友達”
「へえー、会ってみたいな。ね、つー君」
「うん。僕、あんまり人にあったことがないから、知ってる人が増えるの嬉しい」
“僕も。お友達、周しかいないから。つー君とたぁ君とあえて良かった”
手をうんっと伸ばしながら有岬はボードに書き込む。
少し書き辛そうにしているけど、有岬はすらすらと書きあげた。
「僕達、どこか似てるよね」
不意に汰絽がそんなことを呟く。
そうかも、と有岬は思い、右隣に寝転がる椿を見た。
灰色の髪がとても綺麗で、まるでおとぎ話に出てきそうだ。
儚く、淡い、綺麗な人。
左隣に寝転がった汰絽を見る。
蜂蜜色の髪の毛がふわふわとしていて、可愛らしい容姿にあっている。
どこか、猫のような気品が漂っていた。
「つー君と、仲良くなる前ね、僕、すっごく大切にしなきゃって思った」
「そうなの?」
「だって、つー君、時雨さんの後ろに隠れてて、もし僕と2人になったときは僕が守らなきゃって」
「えー? …僕は、たぁ君とあったときは、ずっと一緒にいたいなって思ったよ」
2人が仲よさそうに話すのを聞いて、有岬は少しだけうらやましいと思った。
でもそれは穏やかなもので、聞いている有岬の心を優しい気持ちにさせる。
「時雨さんとたぁ君への好きの気持ちは違うけれど、たぁ君のこと大好きだよ」
「ありがと。僕もつー君が大好き。…これからは、うさ君もだよ」
汰絽が笑ってそういうのを聞き、有岬はばっと起き上がった。
2人もつられて起き上がるのを見て、有岬は2人に抱きつく。
大好き、と伝えるように。
砂浜にいる3人がぎゅうぎゅうと抱き合っているのを見て、風太がタバコを落とした。
椿と汰絽の中のよさは折り紙つきだが、そこに有岬も入ったのか、と納得していると、井上も同じようにタバコを落としている。
「大丈夫ですよ。そのうち慣れますって」
風太の言葉に、井上が苦笑いする。
子供相手に、むきになるな、と風太に言われたように感じた。
だが、風太の意図は違ったようで、時雨にですよね、と同意を求める。
その様子を見て、俺もまだ器が狭いな、ともう一度苦笑いした。
「井上、今どこに住んでるの?」
「ん? あの喫茶店から少し離れたところ」
「へえ、奇遇だなぁ。俺のもそこから少し離れたところのマンションだよ。春野君も」
「そうか。じゃあ、これからは遊びに行かせてもらおうかな」
井上が笑うのを聞き、時雨も笑った。
風太は自分の落としたタバコを拾い、携帯灰皿に入れる。
井上も自分の落としたものを拾い、風太の携帯灰皿に入れさせてもらった。
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