ふんわりとした-2-
喫茶店をでて、井上と時雨がどこに行くと聞いいたところ、同じ場所へ行くことになった。
行き先は海で、椿がとてもうれしそうに笑みを浮かべた。
有岬も井上の手を握りながら微笑んでる。
「あ、待って。俺の友人と落ち合うことになってたから、向こうのコンビニに寄らせて」
時雨の車に乗り込むと、時雨は思い出したかのように言う。
ああ、と答えた井上は後ろでしっかりシートベルトを締めながらにこにこしている有岬に目を向けた。
「椿、有岬君、車酔いしたら言うんだよ」
こくりと頷く2人を確認して、時雨は車を出した。
コンビニにはすぐに付き、有岬と椿は井上に頼まれ飲み物を買いに行く。
井上と時雨は車から降り、タバコを吸いながら、時雨と話す。
話している途中、白髪の青年とふわふわの茶色い髪の子が歩いてくるのが目に入った。
「あ、来た」
「あの2人か?」
「あぁ。春野風太君と、小さい方が春野汰絽君」
「風太君と汰絽君ね」
ゆっくりと歩いてくる2人はやけに楽しそうに会話している。
2人分の荷物を持った風太は、時雨に気付いて手を軽く振った。
「こんにちは」
「こんにちは、春野君に汰絽君。今日は偶然に旧友にあってさ、2人増えたけど構わないかな」
「俺は構いませんよ。そちらは?」
「井上道幸です。風太君と汰絽君?」
「はい。こんにちは、井上さん」
汰絽と風太が次々にあいさつする。
椿君は、と時雨に聞き、時雨は今買い物してるよ、と告げた。
風太から金を受け取り、汰絽は店内に入っていく。
井上は柔らかに笑う汰絽を見て、思わず微笑んだ。
「優しそうな子だなぁ」
井上がのほほんとした声を出すのを聞いて、風太が笑う。
時雨も同じように笑い、風太に荷物を後ろに積むように告げた。
買い物を終え、3人は戻ってきた。
汰絽はすでに有岬と仲良くなっていて、井上が関心している。
風太もすぐに有岬とあいさつを交わした。
運転席と助手席に、時雨と井上。
後部座席に椿と有岬、一番後ろに風太と汰絽が乗る形になった。
風太と汰絽はむくと電話をしていて、有岬と椿はコンビニで購入したお菓子を食べている。
「風太さん、飲み物とって」
電話が終わったのか、汰絽と風太が飲み物を飲んだりゆったりし始めた。
有岬は後ろの2人が気になるのか、ちらりと視線を向ける。
それに気付いた風太がどうした、と問いかけた。
“たろ君と風太さんって付き合ってるの?”
ボードに書かれた言葉に、風太が笑って答える。
汰絽もおんなじように笑いながら、有岬君は、と問いかけた。
こくりと頷いた有岬に汰絽は笑みを浮かべる。
「うさ君、後で髪の毛触らせて」
汰絽がうっとりとした顔をして、有岬の髪を眺める。
そんな汰絽に有岬はこくりと頷き笑う。
「たぁ君の髪の毛もふわふわで気持ちいよ」
椿が汰絽の髪の毛を触りながら言うのに、有岬も同じように汰絽に手を伸ばした。
ふわふわとした感触に、有岬は満面の笑みを浮かべる。
“ふわふわ気持ちい。床屋さんとか行ってるの?”
「ううん。風太さんに切ってもらってるよ」
“へえ、上手なんだね。風太さんは自分で切ってるの?”
「俺は汰絽に切ってもらってるよ」
“2人とも上手なんだね。すごい”
感心したように書かれていく文字に、風太と汰絽はそうかな、と笑う。
そうこうしているうちに、海にたどり着いた。
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