罪悪感

夜中、急に目が覚めて深い自己嫌悪に陥る。
そうこうしているうちに朝が来て、仕事に行かなければいけなくなる。
そんな毎日を暮らしていた。

罪悪感が胸にゆっくり降り積もっていく。
有岬に対して、それから、光に対しても。
罪悪感に苛まれる中、井上は退職願を書いていた。


「…俺は」

その先の言葉は続かない。
窓を見ると、もう夜が明け、空が明るく輝いていた。



退職願を出し、井上は地方に引っ越した。
自然が豊かなところで、心を少しでも落ち着けることができる場所。
教員の空きができたところをみつけて、今は小さな小学校に勤務している。

それでも、罪悪感は消えることがなかった。
日に日に度を増していく。


「井上先生さようならー!!」

「さようなら、気をつけて」

すれ違う生徒達とあいさつを交わし、井上は引っ越したマンションの一室へ帰る。
ようやく通い慣れてきて、意識しなくても、その道を歩くことができるようになった。

真っ暗な部屋に入ると、ため息が洩れる。
夜月から届いた手紙が郵便受けに入っていて、井上はそれを手に取った。
手紙の中には写真が一枚入っていた。


「…髪が伸びたな」

写真の中の有岬は、少し大人びた。
髪も伸びて、綺麗な瞳に目が奪われる。
そっと写真を撫でて、井上は微笑んだ。
けれど、その微笑みもつかの間で、すぐに表情が暗くなる。


「…ごめんな、俺のせいで…」

ぎゅっと拳を握り締め、井上は玄関にしゃがみこんだ。


「ごめん…」

漏れる言葉は寂しいもので、自分の声はこんなにも弱かったのか、と唇をかみしめた。
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