高熱

「はい。…すみません。俺も休ませてもらいます」

『いやいや。沖田も風邪引かないように。お兄さんに連絡しておこうか?』

「いえ。俺のほうからさせてもらいます。じゃあ…」

『うん。桃千にお大事にって』

「はい。失礼します」

通話の切れた携帯を机に置き、周は有岬の部屋へ向かう。
咳込む音が聞こえ、周は発作止めを手に取り扉を開けた。


「うさ、ほら」

こくこくと頷きながら、発作止めを吸い込む。
呼吸を整えてからゆっくりとベッドに横たわった。


「調子悪そうだな…」

“学校行きたい”

「駄目だ。この間も無理していったばかりだろ。…もう学校に連絡したから」

しょんぼりとしたように有岬が布団をかぶる。
その上からそっと頭を撫でた。
最近あまり調子が良くないな、と、呟く。
有岬が布団の中で身動きするのを感じた。


“先生に会いたい”

携帯に打ち込まれた文字に、周は苦笑した。
それから額に張り付いた髪をよけて、額を軽くたたく。


「体調崩してたらあっても意味ないだろ」

“でも…”

「それに、心配されれば、あのこともばれる」

“…わかった”

しぶしぶと布団に戻っていく有岬に周は今度は声を出して笑った。
布団から少し出た髪を梳いて、朝食と薬の準備してくる、と告げる。
有岬の部屋から出て、簡易キッチンに向かった。




「うさ?」

お粥とゼリーを手にして部屋に入ると、ぐっすりと眠りこんでいる有岬が目に入る。
真っ赤な顔がとても熱そうに見えて、周はお盆を机に置いた。
乾いたタオルで汗を拭いて、氷が溶けきった氷枕に手をやる。
もう一度キッチンへ戻り、氷枕を作り直した。


部屋に戻り、氷枕を入れてやる。
そっと頬を撫でる。
氷枕の冷たさからか、有岬がほっとしたように息をついた。
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