全然楽しくない。彼、南雲晴矢に言えば、なにが?と、皆目検討もつかないといったふうに答えてきた。察しろよばか。わたし彼女なんだぞ。

「悪ぃ、試合始まるからまたあとでな!」

手を数回振ったあと小走りに去っていく彼。なんだよちくしょう。そりゃあ、見たいって言ったのはわたしだよ?大好きな彼氏が活躍する場面を一度でもいいから生で見たいって言いましたさ。で、今その試合を見てます。楽しくない。シュートとかカットしたときとかかっこいいなあって思ってるよ。思ってるけど楽しくない。こう、胸の奥がもやもやするの。多分これは構ってもらえないからこうなっちゃってるんだと思う。わたし以外に夢中になってるのが嫌なんだ。まあそれが1〜5回程度、しかも1ヶ月に一回とかならまだ我慢できる。でもこう週一程度でやられるとこちらとしても面白くないわけで。わたしとデートするよりも、サッカーをしに行く方が多いとか。もうサッカーと付き合えよ。

「っしゃあっ!!!」

どうやら彼のチームが勝ったようで、ガッツポーズをしたり拳をぶつけ合ったりしてる。ここはわたしも喜ぶべきところなんだろうけど、素直に喜べない。

「なあ、試合どうだった?」
「超次元でびっくりした」
「それだけか?」
「あと、かっこよかった」
「そっか!」

照れたように、でもどこか嬉しそうに笑う彼に文句なんて言えるはずもなく、ただ彼を見ることしかできなかった。こんなに楽しそうにしているのに文句なんて言えるはずがない。彼からサッカーを奪うことなんてわたしにはできない。楽しくやっているのならそれでいいじゃない。別にわたしがどうこう言える立場でもなんでもない。自分の我儘じゃないか。彼女として最低だな。

「俺さ、いつかアンタと一緒にサッカーやりたいから頑張ってんだ!そしたら教えてやれるし!だから、その…もう少し待っててくれ」

なんだこいつ。惚れ直しちゃったじゃん。



120315
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