小さな袋から白色の丸い飴玉を出す。それをまるで太陽の光を遮るかのようにして太陽に重ねる。実際、そんなことをしても太陽の光からは逃れることは出来ないのだが。

「ねえ、」
「なんだ?」
「飴ってさ、どうして溶けて消えていくのかな?」
「…た、食べ物…だからじゃ、ないのか…?」

突然の質問に、言葉がつまった。それにそんなこと考えてもいなかったから、と、簡単な質問ほど答えにくいというやつもある。言い訳にしか聞こえないと思うけど。

「食べ物、ね」
「……お前の考えはどうなんだよ」
「そうね、」

少し考えてから、「好きだから、かな」と飴玉に向かって微笑んだあとキスをするように唇にあてて、口の中へと運んだ。飴玉を頬から逆の頬へと舌で動かす音が聞こえる。カラン、コロン。

「飴、好きなんだな」
「うん、好き」

甘くて優しい味がするから。右の頬に飴玉を入れてもごもごと話す。例えるなら……リス、だな。

「それでね、人間も飴だと思うの」
「どうしてそう思うんだ?」
「だって好きな人といるとき溶けちゃいそうになるでしょ?」

少しずつだけど、体温が上がってきている。それは足から胴体、胴体から指先、最終的には指先から顔へと熱が集まってきた。どうにかして火照りを鎮めたい。が、焦れば焦るほど熱は上がってくる。

「好きな人といるとさ、どんなに些細なことでも嬉しくなるでしょ?心臓の鼓動が速くなるでしょ?火照るでしょ?」
「………」
「風丸もなるでしょ?」
「あ、…その……」
「熱くて溶けそうになる、ね?」
「う、あ……え、っと…」

なんだか見透かされてるような気がして更に熱が集まった。これはバレてしまうかもしれない。けれど熱は冷めるどころか加熱してくる。ヘタをすれば沸騰しかねない。

「ふふ、溶けそうだね」
「わっ、笑うなよっ!」

触れないでいてほしかったことを言われてもう沸騰寸前まできた。逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、なぜか彼女から身体が逸らせなかった。原因は…わかっている。自覚はある。

「可愛いね」
「…可愛いって言われても俺は嬉しくない」
「そう…あのね、」

ふわっと、目の前で髪が舞った。気づけば彼女の顔は俺の耳元にあった。息遣いと彼女の髪が耳にかかりくすぐったい。離れようと身体を動かしてみるが抱きつかれているらしく動けない。「ち、近いんだけど…」「いいの、これで」言っても離れてはくれない。恥ずかしさで腰が抜けそうだ。彼女に心臓の音は聞こえていないだろうか。俺の体温で熱くはないだろうか。俺は、凄く、熱い。もう限界かもしれない、そう思ったとき、彼女が話出した。耳の奥に吐息と囁く声が届き終わったあと、あの飴玉のように溶けて消えた。



「君にも溶けてました」


110820
溶けて消えたのは風丸です。片想いが溶けて消えて両想いになったってことです。説明しないとわからないな。

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