「さっきから言おうと思ってたんだけどさ、その格好はなんだ?」
「自分の服だけど。」
「そうだとは思ってるけど、魔女なんだろ?黒い尖った帽子と長いローブは?あと空飛ぶ箒。典型的な魔女の格好ってやっぱりそういうもんだろ?」
「人間が勝手に想像しただけでしょ。」
私達だって服装へのこだわりくらいあるから。そう言って俺の足を踏んできた。この魔女は見かけと性格が反対だ。そして一応女の子だから顔を歪めるだけにしておく。
「…ところで名前は?」
「魔女さん、とでも呼んでくれ。」
「もろバレてるぞ。」
「人いないしいいじゃん。」
「問題はそこじゃないから。」
さっき魔女狩りの話をしてたじゃないか。
「私飛び出してきたから名前がバレると面倒なんだよね。」
「え、それって…」
「そ。つまり家出。」
「…今すぐに帰るんだ。」
「やだ。せっかく外に出れたんだ、まだ帰らない。」
「ダメだ!お前の事絶対心配してる!」
「……………。」
少し申し訳なそうな顔をして黙ってしまった。家出をしたことを悪いと思っているのだろう。それに、自分の子供を心配しない親がいるわけない。
「わかったなら早く帰るんだ。」
「………わかった。」
「よし!なら途中まで「電話して許可もらえば早い話だ!」………。」
ちょっと電話してくる!俺と少し距離をとって、片耳に手を当てて喋り始めた。もちろん携帯電話などは使っていない。取り出してすらもいない。はたから見れば頭のおかしな子だと思われるかもしれないが、なぜかさっきから人っ子一人いない。俺達以外誰もいないのだ。
「じゃ、そういう事だから!………許可もらった!」
「…ただの独り言じゃないのか?」
「ふざけんなポニーテール!!」
「がはっ!」
腹に…け、蹴りを入れられた…!しかも回し蹴り、だと…!?本当にこの魔女は見かけと性格が反対だ!まあ、人は見かけによらないって言うけど。………まずこいつ魔女だった。うっ、息がしづらい…。
「兎に角!ちゃんと許可はもらったから!」
「そ、それでも…、俺の親には、なんて、言うんだ…?」
「ふん、任せなさい!」
自信があるらしく、胸を張って言った。小さいから張る胸があるとは思えないけど……、っ!べっ、べべべ別にずっと胸見てたわけじゃないからなっ!顔を上げたらたまたま目に入っただけでっ、
「なに赤くなってんの。」
「ゆっ、夕陽の色じゃないのかっ!?」
「ふーん。」
口が裂けても言えない…!この際、声が裏返ったとか気にしない!
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