「風丸、豪炎寺!これなんてどうだ?」
「デザインはいいんじゃないか?」
「あとは手に合うか、だな。」

日曜日、俺達三人は商店街のスポーツ店に来た。休日という事もあって人が多い。特に親子連れが多く、半分くらいを占めている。

「おっ、これいいな!」
「それにするのか?」
「ああ!おじさん、これください!」
「もう少し見ておいた方がいいと思うけどな。」
「全くだ。」

円堂の会計が終わるのを豪炎寺と待つ。その間、二人でスパイクを見る。これは軽くていいとかデザインがイマイチだとか値段が高いとか。周りから見れば主婦の会話だと間違われるんじゃないだろうか。でもこれは本音だから仕方がない。営業妨害ではないはず。

「豪炎寺、これなんかいいんじゃない、か…?」
「…どうした、風丸。」
「え、あ…いや…あの女の子。」
「店の奥にいるやつか?」
「ああ。あんな子、この店にいたか?」

俺が見たのはここら辺では見かけない子。横顔だからよくわからないが。この店にいるって事はここの子供か、又はお客かって事になる。それにしても、お洒落だな。

「俺はよく知らないが、いたんじゃないか?ただ姿見せないだけで。」
「そうか…。でもそうしたら学校では会うんじゃないか?ここら辺に住んでるとしたら雷門中に行くだろ?」
「確かにな。なら、隣町とか遠くの方から来たんじゃないか?」
「そう言われればそうかもしれな、っ!」

店の奥へ目を向ければ、あの女の子もこちらを向いた。その時、あ。と口が動いて奥にあるドアを開けて行ってしまった。奥のドアはこの店の関係者しか出入り出来ない。そうするとあの女の子はこの店の子供、という事になる。あんなに可愛い子、この店にいたんだ。普段聞こえない自分の心臓の音が、今ははっきりと聞こえる。こんなに音、大きかったけ。顔を思い出すだけで加速する心臓の脈。それに合わせるかのようにして呼吸が乱れていく。熱い。自分の体温が上がっているのがわかる。ああ、これが一目惚れなんだ。豪炎寺の風丸、顔が赤いぞ。なんて、どうでもいい。今はあの子の事しか考えられないから。

100823

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