「今日隣町からこっちに引っ越してきた子だ。自己紹介は出来るな?」
「はい。」

返事の後、自分で黒板に名前を書き始めた。少し大きめに書かれたそれはわかりやすく、流石女子だな、と思った。つまり綺麗という事。

「…どうぞよろしく。」

書き終わった後、ゆっくりと振り返って一言そう呟やくように言った。先生は、皆仲良くしてやってくれな。とその子の言葉に付け足すように言った。

「席は風丸の隣だ。風丸、手を挙げろ。」

す、と手を上に挙げる。あいつの隣、つまり窓際だ。と先生が言った。前から歩いてくる転入生は教室に入ってきた時からだが皆の視線を集めていた。男女共にあれはありえない、と小声で話している。それもそのはず。なぜなら、女子だというのに髪はボサボサで制服はだらしない。(汚いというわけじゃない。)おまけにグルグル眼鏡ときた。あれはちゃんと見えてるのか?逆光だから見えないんじゃないのか?その前にグルグルがある時点で見えないんじゃ……頭痛くなってきた。ところで俺はいつ手を下ろしていいんだろう。

「いいぞ、風丸。」
「はい。」

手を下ろした瞬間、上っていた血が下へ流れ出したような感覚がした。こんなになるまで挙げていたのか。隣を見ると既に席に着いていて、窓の外をじっと見ていた。「俺、風丸一郎太。よろしくな。」隣の席という事もあって挨拶をすれば、どうも。とだけ返ってきた。こっち向いてくれたっていいのに。

100818

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