「おっと、ピンポンダッシュするのを忘れるところだった」
「防犯カメラに注意しろよ」
「犯罪者かよ!その前にねえし!」
「名無し、準備はいいか?」
「ばっちり!いつでも行くよ!」
「え、あっ、ちょっ待っ!」
「うおおおおおお!」

ピンポーン

なっ、なんだ、と…!こいつマジでやりやがった…!しかも気合い入れながら走って行ったのに押す時はかなりソフトタッチって…!音がなめらかで綺麗だなー、とか思ってないからな!てかっ、

「ピンポンやったらダッシュしろよっ!」
「あ、逃げるの忘れてた」
「誰か来たぞ」
「!」

ガラララ、とドアがスライドする音がした後、なぜか身構える俺。俺は悪くないんだけどな、なんでだろうな!

「はい、どちら様?」
「こんにちは、あたし、名無しって言うんですけど、お母さんいますか?」
「わ、わたしですけど…」
「へえーじゃあお父さんいますか?」
「主人は奥に…」
「じゃあお父さん呼んでもらっていいですかっ!?」
「え、ええ……ちょっと、待っててください」

「…お父さんが再婚したんだわ」
「それにしてもさっきの人綺麗だったな」
「!あ、あたしのお母さんの方が美人なんだからねっ!」
「………………」

俺だけかな。あいつがどこかのセールスの勧誘するやつに見えたの。

「よ、呼んできたわ」
「あーもう、ちょっとお父さん!なに再婚してんのよ!お母さん絶対悲しんでるんだからねっ!大体、あたしに内緒ってどーいう事なのよっ!しかもまた太った?運動しなきゃダメでしょ!そのせいか老けて見えるんですけどー!」
「……君、誰だい?」
「あたしだよ!名無し!娘の顔も名前も忘れちゃったの!?昨日までずっと一緒だったじゃんか!」
「人違いじゃないか?」
「…じゃあ、あたしが一番得意な芸は?」
「知らないなあ」
「!!?あ、あの素晴らしいあたしの芸が…お父さんが一番喜んでくれたあの芸が…わからない、だと…!?」
「それと、僕は一昨日、この人に結婚しようって言ったばかりだから」
「なっ、なんですとおおおおっ!!」
「あなた…隠し子なんかじゃないのよね…?」
「ああ。君以上に素晴らしい女性なんかいないからね」
「あなた…っ!」
「そういう事だから、じゃあね」



「…………帰ろう」
「お、おい…!」
「バーン、今はそっとしておいてやろう」



あんな姿、初めてだ。


((言葉をかけてあげたいが、))
((なんて言えばいいんだよ…っ!))


100713

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