遅刻しました0718


「んー、あっつー……」
背後から聞こえた声にタオルを手渡そうと振り返れば、目に眩しい背中があった。
「っ、つば、き?」
「ん、暑いから脱いじゃったー」
脱いだユニフォームを手に持って、えへ、と振り返った笑顔はいつもと変わらなくて、でもなぜだか胸が高鳴った。
服越しでは気にならないのに意外とある筋肉に『男』を感じて、思わず投げつけるようにタオルを渡した。
「わわっ」
慌てて受けとる椿が、拭いてくれないの? なんて言ってくる。
なんだよ、普段そんなこと言わないくせに。
「みやちゃん顔赤い、照れてるの?」
悪戯っ子のように笑いながら椿が言う。
「俺が拭いてあげるっ」
ばさ、と頭にタオルを被せられた。
タオルに視界を遮られた中で、わしゃわしゃとでもされるのかと思ってたら、

ちゅっ

ちいさなリップ音。
気づけば椿の顔が目の前で、子どもみたいな少し照れた笑顔。
え、今、
「えへへ、みやちゃんにちゅーしちゃった」
無意識に自分の唇をおさえていた。
だって、椿からキス、なんて、……。
顔が熱い。体が熱い。
きっとこれは日差しのせい。
そう、夏の暑さにやられただけ、……のはず。


END


タオルに隠れた小さなキスは、汗のにおいがした。

[mokuji]



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テーマ「人外ファンタジー」
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