どこへも行かないから。(ジノタツ)


「ねえタッツミー、これ君にあげるよ」
背中から声がした。
「あ?」
「プレゼント」
肩越しに手が伸びてきて、胡坐を組む足の上に袋がカサリと音を立てる。
「あー、どーもね」
「・・・それだけ?」
「今忙しいから、構ってほしいなら後でな」
テレビ画面を見つめながらそういうと、不満そうな声。
「今見てくれないのかい?」
「後でな」
「・・・ふむ」
足の上から袋の重みがなくなる。
カサカサと音が響く。
しゃら、と音が聞こえて、白い腕が首元にくる。
そして冷たい何かが肌に触れて、首の後ろでカチリと小さな音。首にかかる重み。
一時停止を押して首元を見ると、ネックレスがテレビの光を反射していた。
そっと触れて形を確かめる。
「こんな高そうなものもらえねーよ」
「いいんだよ。タッツミーにつけてほしくて買ったんだから」
「ジーノ」
洋服越しに背中に伝わる暖かさ。
首筋に息を感じる。
「ねえ、自分ものには首輪をつけておかなといけないでしょう?
 いついなくなってしまうかわからないもの」
「誰がお前のだよ」
肩越しに軽く頭に触れる。
「タッツミー、」
「仕方ねーからもらっといてやるよ」
「、!」
きゅ、と腕の力が強くなってから、離れる。
「ジーノ?」
「またくるよ」
仕事、頑張ってね。
振り返ると、もう後ろ姿しか見えなくて。
でも、なんとなく、なんとなくだけど、
笑っているような、気がした。

END

[mokuji]



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テーマ「人外ファンタジー」
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