rainy(ミヤバキ)

店から出ると、生憎の雨。
傘持ってきてよかったぁ、なんて思ってたら、軒先に見慣れた姿を見つけた。
「ミヤちゃん?」
びく、として振り返った顔は、やっぱり見慣れたもので。
「椿」
「傘、ないの?」
首をかしげて尋ねると、彼は首を縦に振る。
「雨降る前に帰れると思っててさ」
ちょっとでも弱まったら走って帰ろうと思って待ってるんだけど、なかなか弱くならないんだよな。
そう言って笑うミヤちゃん。
でも、ミヤちゃんの格好はどう見ても薄着だし、雨のせいで空気も冷たい。
このままじゃ風邪ひいちゃう。
そんなの嫌だよ。
「ねえミヤちゃん、傘一緒に入っていこうよ」
「・・・え!?」
「だって寒いでしょ? 風邪ひいちゃうから」
なんと言ってもきかないミヤちゃん、大丈夫だから、ってばっかり。
その腕を強引に引っ張って傘を開いた。
「ほら、入って!」
「えっ、でも・・・椿が濡れるから」
二人で入るには少し小さめの傘。
でも、ミヤちゃんが濡れて帰るよりは全然いいでしょ?
「だってミヤちゃんに風邪ひいてほしくないし」
そういうと、ミヤちゃんはバッと口元を覆う。
少し頬が赤い。
やっぱり冷えちゃったから?
急いで帰らなきゃ。
「あ、あの、」
「?」
「ありがと」
「・・・? うん」
生憎の雨だけど、それでも、
ミヤちゃんと一緒に帰れるなら。
「椿、楽しそうだね」
「そう? ・・・うん、すごく楽しいからかな!」


              END


[mokuji]



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