あいらぶゆー sideI(一之瀬と土門)


――――あいらぶゆー side I


俺は今まで、病院なんて好きじゃなかった。
昨日倒れたときだって、まず考えたのが、病院イヤだな、だった。
でも、もしかしたら病院もそう悪くないかもしれない。

「土門ー、暇なんだけど、なんかないの?」
「昨日本持ってきてやったじゃねーか、一之瀬」
「もう読んじゃったんだよ!新しいのなんかないの?」

俺の大事な人が見舞いにきてくれてるから。
土門は俺の大事なチームメイト。
そして、俺の、個人的に大事な人。
入院してよかった、って思えたのは、土門にちいさなわがままを言えるから。

「しっかしなー。お前、無理しすぎて倒れるなんて、」
「それ昨日も言ったって」

土門は昨日もきてくれた。
今日もきてくれてる。
もしかしたら、明日もきてくれるかも知れない。
…明日退院だけど。
なんか、わざわざ毎日きてもらって、ちょっと申し訳ない気分。
でも、…うん、うれしい。

「早く元気になって、サッカーしたいな…」
「待っててやるから早く来いよ」
「あぁ!いつまでも土門に心配かけるわけにいかないしな!」

別に毎日見舞いにこなくたっていいんだよ?
なんて、言ってみた。
明日こなかったらそれはそれで寂しいけど、でも土門の練習の邪魔をするのもいやだ。
土門がいつも一生懸命練習してるのを、俺はずっと見てきた。
だから、そのがんばりを邪魔するようなことはしたくない、って思ったから。

「そんなこと言ったって、心配なもんは心配なんだよ」

なーんて返される。
…すごく、優しい奴だよな。
今告白したら、どうなるんだろう。
ちらっと頭の片隅をよぎる考え。
しっかりと考える前に、口が動いていた。

「なんか、恋人みたい」

……あ。
違う、違う違うちがくて!

「…は!?」
「なーんて言ってみたりして、あはは」

土門に嫌われるのが、ひかれるのが怖くて、俺は思わず茶化す。
あまりにも不自然だっただろうか、どう取り繕おう、とりあえず頭に手をやって笑ってみる、笑いながらどうしようか考えなきゃ、えーと…

「馬鹿か。帰るからな!」

土門が荷物を鷲掴みにして、早足で病室を出る。
ドアが閉められた。
頭にやっていた手が、ぱたりと布団に落ちる。

…情けない。
今自分はどんな顔をしているんだろう。
真っ赤だろうか、それとも、とても情けない顔だろうか。
あんなこといって、土門に嫌われたりしていないだろうか。
そればかりが心配で。

昔から土門は一生懸命で、その姿を応援しながら見ていた。
お互いに、いい友達だと思っていたんだ。
だから、だからこそ、失いたくない。
今ここで俺の気持ちを明かしたら、きっと土門は離れていってしまう。
だから、…言えないよ。

「土門、――――――」


END

[mokuji]



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