Intently-朝比名ゆずき様

「ミヤちゃーん」
「うわっ!」
いたっ!!
突然の背後からの声に心臓が跳ねる。
と同時に、包丁を持つ手が滑って音を立てる。
「わ、ごめんねミヤちゃ・・・わーーーーーー! ごめんね!?」
あまりにも椿があわあわしてるものだから、なんだか少しおかしくって。
「大丈「手! 手! あの! 手が!!」あの、椿?」
大きな目に涙をためて、震える手で一点を指す椿。
その先をたどると、自分の手に行き着いた。
・・・手に? 赤? ・・・血!?
「み、ミヤちゃん、ごめんね・・・?」
本当に今にも泣き出しそうな椿をなだめながら、流水で手を洗う。
全然傷は深くなくて血はすぐに止まったんだけど、椿は心配そうに俺の手を見ている。
「ほら、大丈夫だって」
今絆創膏貼るから、椿は座ってて。
そう言って椿の前に出していた手を引っこめようとしたら。
きゅ、と手をつかまれたかと思うと、温かくてぬるっとした・・・ぬるっと!?
「えっ、ちょっ椿!? 何して・・・っ!?」
あの、・・・舐めたら治るかなって」
「っ、」
困ったように眉をひそめ、目は潤ませて、俺を見上げながら指を舐めた椿は、その、すごく心臓に悪くて。
俺は思わずぐいっと手を引っ込めた。
椿がびくっと体を震わせる。
「ごめんね、ミヤちゃん・・・嫌だった?」
「嫌っていうかそのあの嫌じゃないんだけど嫌ではないんだけどね?」
「?」
首をかしげる椿。
・・・っ、あぁもう!
たまらず椿を抱きしめる。
「え? え? ミヤちゃん??」
わけもわかっていないはずなのにそっと背に回される手。
「椿、心臓に悪い」
「え、えぇっ!?」
言葉の意味が上手く伝わらなくて、慌てる椿。
大丈夫だよ、といって俺は腕の力を強めた。
「椿ってさ、いつもこんなことしてるの?」
「え、う、ううん、してないよ」
ミヤちゃんにだけ、今はじめて。
その返事を聞いて、安心した。
それとともに、少しの優越感。
こんな椿を見れてるのは俺だけなんだ。
誰も知らない椿を独占している。
そして、これからも。
「ねえ椿、ほかの人にこんなことしちゃ駄目だよ?」
「・・・? うん」
椿がうなづくのを感じて、腕を解く。
この純粋さが、怖いほど愛しい。
好きだと伝えるのは簡単だけど、壊してしまうのが怖いから。
だから、ねぇ、椿、
「ミヤちゃん?」
「・・・ううん、何でもないよ」
もう少しこのまま、このままのキョリでいさせて。

          END

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朝比名さんにいつもお世話になりっぱなしなので、感謝の気持ちを込めたミヤバキ!!
本当にいつもありがとうございます*^^*
荒ぶってるあなたも好きよ!CHU☆←



[mokuji]



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