きみだけは


「……そう、ですか」
「うん、だから、ごめん」
勇気を出して告白して、そして、わたしはたった今、フラれました。
「いえ、いいんです。好きな人がいるなら、仕方ないです」
えへへ、なんて笑って見せて、震える唇をごまかして。
「その人、きっと素敵な人なんでしょうね」
「え、?」
「だって、こんなに素敵な先輩が想ってるような人なんですから」
「……」
どうしても顔が見れなくて、足元ばっかり見つめながらそこまで言う。
先輩は、何も言わない。
わたしはただ、溢れそうになる涙を必死にこらえてた。
それから大きく深呼吸して、笑う膝を叱咤して、顔をあげて、先輩を真っ直ぐ見て。
「わたし、きっぱり諦めますから! だから先輩、その人と幸せになってくださいね」
笑ってそう言ったのに。
今度は、先輩が俯いていて。
「俺は素敵なんかじゃないよ」
「え?」
小さな声に聞き返すと、少しだけ大きな声が返ってくる。
「あの人は、俺なんか好きじゃない。俺にそんなことを言ってくれたのは、君だけなんだ」
「……あの、」
「俺は、自分が嫌いだ。これっぽっちも素敵なんかじゃない」
「せんぱい、」
「酷いと思われるかもしれない、でも」
先輩は、泣きそうな顔で、笑った。

「君だけは俺を好きでいて」






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[mokuji]



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