ここにいる。(ゴトタツ)

壊れてしまいそうな背中に向けて伸ばした手は
わずかに掠めて空を切る
そうしてお前は遠くにいってしまって

行方も
わからない


あと少し早かったら
その腕を掴めていたら
抱き締められたなら

そうしたら
遠くにいかないでくれたのか

その腕を掴めていたら
しっかりと掴めていたら








ふ、と目が覚めた。
あぁ、なんだ、夢か。
隣の温もりが、もぞ、と動いた。

「たつみ」
「んー……もうあさ?」
「まだだよ」
「じゃあねるわ……」

くぐもった声がおやすみ、と言う。
おやすみ、と返せば直ぐに寝息。
あんな夢、……そう、夢。
背中に手は届かなかったけど、
腕を掴むこともできなかったけど、
でも、
ここにいる。

「ん……」
「……猫、だよな」

ぐぐ、と寄せてくる頭を軽く撫で、
そして、
…………おやすみなさい。



―――――ここにいる。


END

[mokuji]



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